みなさん、こんにちは。
いのうえ内科脳神経クリニック院長の井上です。
「最近、なんだか眠りが浅い」「夜中に何度も目が覚める」「日中もぼんやりしてしまう」――そんな睡眠の悩みを抱えていませんか?
実はその背景には、“メラトニン”という小さなホルモンの減少が関係しているかもしれません。
メラトニンは、私たちの体内時計や睡眠リズムを整える大切なホルモンですが、加齢や生活習慣によって分泌量が減ってしまうことがあります。
しかも近年では、メラトニンの減少が認知症のリスクにも影響することが分かってきました。
今回のブログでは、「メラトニンと認知症」の関係性を、脳神経内科医の視点からわかりやすくお伝えしていきます。
ご自身やご家族の健康管理に、ぜひお役立てください。

もくじ
【メラトニンと認知症】眠りのホルモンが脳を守る?
〜脳神経内科医が解説する“見えないリスク”〜
こんにちは。
いのうえ内科脳神経クリニック院長、脳神経内科専門医の井上です。
「最近、夜なかなか眠れない」
「睡眠時間は取れているのに、日中ぼんやりしている」
「年齢とともに物忘れが増えてきた」
これらの背景には、“メラトニン”という小さなホルモンの減少が関係しているかもしれません。
今回は、「メラトニンの低下」と「認知症リスク」の関係について、脳の働きや生活習慣とのつながりを含めてお話しします。
■ メラトニンとは?
メラトニンは、**脳の奥にある松果体(しょうかたい)**という部位から分泌されるホルモンで、「体内時計を整える役割」を果たします。
主な働き:
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夜になると分泌が増えて眠気を誘発
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朝に光を浴びると分泌が止まり、覚醒モードに
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睡眠の質と深さを調整する
つまり、メラトニンは眠りを司るホルモンであり、「生体リズムの司令塔」とも言われています。
■ 加齢とともに減るメラトニン
年齢を重ねると、メラトニンの分泌量は自然に減少していきます。
年齢 | メラトニン分泌量(目安) |
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10代 | 最も多く分泌される |
40代 | 約半分に低下 |
60代以降 | 若年時の1/4以下になることも |
このメラトニンの減少が、睡眠障害だけでなく、実は認知機能の低下とも関係しているのです。
■ メラトニンの低下と認知症の関係
近年の研究では、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の患者では、メラトニンの分泌が著しく低下していることが報告されています。
▼ 具体的な影響:
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夜間せん妄(夜間の混乱や徘徊)
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メラトニンの低下により、昼夜の区別がつかなくなる
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記憶や判断力の低下
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睡眠が浅くなると、記憶の固定や脳の掃除(老廃物の排出)がうまくいかなくなる
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脳のゴミ「アミロイドβ」がたまる
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質の良い睡眠中に排出されるアミロイドβが、睡眠障害によって脳に蓄積 → 認知症の進行因子に
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■ 認知症予防におけるメラトニンの重要性
現在、メラトニンそのもののサプリメントや、**メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン、メラトベル)**が、軽度認知障害(MCI)や夜間せん妄の改善目的で使われるケースが増えています。
▼ 認知症予防の観点からできること:
生活習慣 | メラトニン分泌を促す工夫 |
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朝の習慣 | 起床後すぐに太陽光を浴びる(体内時計をリセット) |
夜の習慣 | 寝る2〜3時間前からスマホやPCを控える(ブルーライトを避ける) |
食生活 | トリプトファンを含む食材(バナナ、乳製品、大豆製品)を摂る |
寝室環境 | 暗く静かで快適な温度を保つ |
■ メラトニンのサプリや薬は必要?
現在、日本ではメラトニンサプリは医薬品扱いのため、市販では購入できません。
医師の診断のもと、処方薬としてメラトニン受容体作動薬が用いられることがあります。
ただし、基本は生活習慣の改善が第一です。
夜更かし、ブルーライトの多い生活、不規則な睡眠リズムは、認知機能の衰えを早めるリスクになります。
■ まとめ
メラトニンは、単なる「眠気のホルモン」ではなく、脳を休ませ、守るための重要な役割を果たしています。
その低下は、睡眠の質の低下のみならず、認知症のリスクにも関わる重大な因子です。
当院では、睡眠と認知症の関係に関するご相談や、生活習慣・薬物療法についてのアドバイスも行っております。
「最近、眠りが浅くて物忘れも気になる…」という方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。