もくじ
水ぼうそうって多くの人が経験されていると思いますが、医学用語では水痘(すいとう)と呼びます。
水痘帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルスが原因で、体の中に入って、体中の皮膚が痒くなり、
赤くなり、しばらくするとちっちゃな水疱(すいほう)という水の袋ができて、
それから水疱の中がにごり、膿(うみ)になってかさぶたになるのです。
兎も角、痒いのですが親には描くなと怒られる皮膚の感染症です。
これって、
感染して二週間もしてから症状を出しますがこれをウイルスの潜伏期(せんぷくき)といいます。
主に小児(9歳未満がおおいです)が罹患しますが、
というのも一度かかってしまえば多くのかたは、二度かからないと言われているからです。
これを免疫(めんえき)を獲得(かくとく)したといいます。
ところが皮膚は治ってもウイルスは死なずに人間の神経節(しんけいせつ)というところにウイルスが
一生、宿る(やどる)ことになるのです。
症状はだしませんのでウイルスが潜伏(せんぷく)しているということになります。
そして、体力が低下したときに、ウイルスはここぞといわんばかりに皮膚に向かってでていきます。
神経節は左右いづれかの部位からウイルスがでることが多く、体の半分のみが罹患(りかん)するのです。
この時は、かゆみに加え痛みを感じることが多く、
その後に皮膚の発赤(ほっせき)ができて水疱形成し、
膿疱(のうほう)形成し、かさぶたになって痂皮化(かひか)して治癒されるのです。
人によって千差万別(せんさばんべつ)ですが、痛みが起こって皮膚の症状がでるまでほぼ同時という方や皮膚の症状が先という方もいらっしゃいます。
痛みの程度もピンからキリで、人によっては人生で経験した痛みで最も痛いと言われるかたもいらっしゃいます。
痛みが生じてから発疹がでるまで、2週間もかかる場合があります。
この発疹のでかたは体に帯をかけたように帯状に神経の支配領域に沿って出現するのでこの発疹のことを帯状疱疹といい、この状態も帯状疱疹というようになりました。
帯状疱疹は50歳代から発症率が高くなり、80歳までの約3人に1人がかかります。
じつは、決してまれな疾患ではないのです。
(国立感染症研究所 感染症疫学センター IASR. 2013, 34, p. 298-300.)
水痘の痘(とう)という漢字
やまいだれは病気を意味し、その中の豆(まめ)で併せ字なんです。
豆のような病気ができることを意味します。
*日本では年間数十万人が小児を中心に水痘にかかっていましたが、2014年10月から始まった水痘ワクチンの定期接種により、水痘の感染患者さんは過去10年間と比べて大きく減っております。
今後もこの傾向は進んでいくものと思います。
帯状疱疹ウイルスは人の体の神経節に宿っていますので、出現する皮膚は神経支配のあるとこととなり、足先から頭のてっぺんまであらゆるとことに出現します。
顔面の部分は、三叉神経という神経に支配されており、頭の部分は後頭神経という神経に支配されております。
この二つの神経節にいた帯状疱疹ウイルスが免疫力低下により、顔面や頭部の皮膚へ神経の走行に沿って向かって行った時は大変です。
人の体の神経って知覚過敏(ちかくかびん)になりやすい神経があります。
その代表的な神経に、この三叉神経と後頭神経があります。
他には肋間神経や坐骨神経などがあります。
知覚過敏になりやすい神経に関連した皮膚を帯状疱疹ウイルスが攻撃するのでたまったものではございません。
痛みはズキっズキっといったようにキリで突き刺さるようだったり脈拍に合わせてズキズキするようなものがあります。
66才の患者さん、強い頭痛のため頭の中になにか起こったと思い来院
頭のてっぺんがズキズキとすることで当院に受診されました。
頭痛出現時から寒気と体温の上昇あります頭痛が始まり四日位してから写真のような皮疹が出現しています。
帯状疱疹による頭痛として抗ウイルス薬で治療しました。
念のため、水疱帯状疱疹ウイルスの抗体価(CF)を測定しました。
治療前は4倍でしたが、治療後は64倍になっていました。
ウイルス感染はこのように二週間位の間隔で抗体価が四倍以上増加すると言われております。
(掲載にあたって患者さんからの了承を得ております)
皮膚感覚の図(この神経支配によって皮膚が罹患します)
*帯状疱疹ウイルス罹患と椎骨脳底動脈解離(ついこつのうていどうみゃくかいり)の関連が近年報告されております。
【参考文献】 Lee K et al. Endovascular treatment using woven stents for ruptured vertebral artery dissecting aneurysm induced by varicella zoster virus: case report.Br J Neurosurg. 2016;30:672-674.