いのうえ内科脳神経クリニックの井上です。
広島市内で頭痛・認知症をはじめとして神経疾患をおもに治療しております。
広島市内は満開の桜ですが
あいにくの雨
三寒四温のいまの季節
しかたないですが
昨日は舟入市民病院付近の土手を散歩
もくじ
認知症はなおる?
「お母さんが最近物忘れが強くなってきた。」
「年のせいだから仕方ないか?」
物忘れあるんだけど病院連れて行く時間がないし、、、
コロナ禍で不要不急の外出はできないし、、、
そのような思いで病院受診をされないかたは実際、多いのではないでしょうか?
先日来院された、物忘れの患者さんは治療されて帰宅されました。
おそらく病院にはしばらく無縁の生活ができるでしょう。
本邦では2012年の厚生労働省研究班の調査で65歳以上の認知症のかたは約462万人、推計15%と算出されております。
2025年には730万人のかたが本邦で認知症になると推計されております。
以前のブログで認知症の予防についてのおはなしをしました。
今回は病院にいって治療しよう!
です。
認知症と診断されるかたの9%はなおる認知症。
・脳血管障害 記憶の回路(海馬体→脳弓→乳頭体→乳頭視床路→視床前核→帯状回)に直接梗塞がおこるようなものから。。。
・正常圧水頭症 歩行障害が合併するとすぐに手術できますが、そうでないと診断はむつかしい。
・感染症 以下のような数年前や数十年前の梅毒感染が。。HIVやコロナウイルス感染症でも可能性はあります。
・ビタミン欠乏症 なぜ欠乏したのかまで追求します
認知症の主訴で、胃癌がみつかり命もたすかり認知症もなおり歩行も改善したひともいらっしゃいます(この認知症の原因は?答えは文末に)。
・アルコール多飲 辞めていただくのが大変ですが!
・甲状腺疾患 甲状腺の機能異常なくても橋本脳症という病気で認知症に!
・薬剤性(なんと3.4%も 抗コリン薬といって睡眠薬などはすぐわかりますが、胃薬や降圧薬が原因のことも)
など多々。
アルツハイマー病と診断されたかたでも
治る認知症を合併しているかたは多くいます。
老年期認知症(65歳以上発症の認知症)は通常年単位で進みますが、これらのなおる認知症は数週間単位で、あるいは数時間単位で進行する急激なものが多いです。
以前、広島大学病院で某先生がアルツハイマー病として外来フォローしていた患者さん。
物忘れの進行が速いので入院していただきました。
入院中に私が主治医で担当
なんと梅毒感染による認知症だったのです。
治療中には夜間、病院を抜け出しました。
探し出した当直医を殴りつけるなど一悶着ありました。
しかし
抗生物質点滴治療により治癒。
社会復帰されました。
ビタミン欠乏症においてはかなりな頻度で見られます
認知症を疑ったときに必ずしないといけない検査がビタミンB1・B12・葉酸の採血。
当院では患者さんとご家族の了承が得られたら同時にビタミンB1とB12の静脈注射をすることがあります。
この時にビタミンB1注射の匂いがわかるかについて確認しています。
この匂いが分からなくなる認知症のかたは多いのです。
アルツハイマー病のかたで亡くなられた後の剖検によると
3割程度のレビー小体型認知症のレビー小体が大脳に蓄積していると報告されています。
・嗅覚異常・便秘・夜間の大声 この三大症状が出現すればレビー小体型認知症が将来的にかなりな率で発症すると思われています。
また
レビー小体型認知症は薬に過敏になりやすい。
したがって
この病気を早く見つけることは
くすりによる
・パーキンソン症候群の悪化
・嚥下障害
・過鎮静
・悪性症候群(意識障害をおこす大変な状態です)
・意識障害
を事前に避けれます。
で
ビタミン採血と注射について
過剰医療・不適切検査・治療と認められない(保険請求ができない)ようです。
検査されないところも多いですが。
限りある医療費
悩ましいものです。
ブログ内での質問のこたえ
ビタミンB12欠乏症です!
自己免疫による萎縮性胃炎という病気がみつかり、萎縮性胃炎が原因となった早期胃癌がみつかりました。
内視鏡で治療できました。
この病気はビタミンB12を吸収するのに必要な内因子という胃から分泌される物質をブロックする抗体ができます(抗内因子抗体)。
ビタミンB12はDNA(ディーエヌエー)をはじめとした細胞を構成するのに不可欠なビタミンです。
それが不足することにより脳(認知症)と脊髄(歩行障害)を来してました。
ビタミンB12の点滴治療により認知症も歩行障害も治療されました。