もくじ
🧠 スマホ認知症で「もの忘れ検査」が下がる?
〜でも、それは“治るタイプ”かもしれません〜
こんにちは。
いのうえ内科脳神経クリニック 院長、脳神経内科専門医の井上です。
最近、「なんだか物忘れが増えた」「集中できない」「頭がぼーっとする」
そんなお悩みをもつ患者さんが、若い世代を中心に増えています。
これらの症状は、いわゆる「スマホ認知症」とも呼ばれ、スマートフォンの使いすぎによる脳の疲労(=脳疲労)が原因になっていることがあります。
📱 スマホ認知症ってなに?
スマホ認知症とは、正式な病名ではありませんが、
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スマホを長時間使うことで前頭前野が疲れる
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注意力・記憶力・判断力が一時的に低下する
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集中できず、頭がまわらない感じになる
といった「可逆的な脳機能の低下」を指します。
つまり、認知症のような症状が出ていても、原因を取り除けば回復する可能性が高いのです。
🧪 もの忘れ検査(認知機能検査)にも影響が出る?
はい、実際に以下のような認知機能スクリーニングテストで点数が下がることがあります:
検査名 | 点数の変化(目安) | 影響が出やすい機能 |
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MoCA(30点満点) | 22〜26点まで低下 | 注意力・実行機能・記憶の呼び出し(遅延再生)など |
HDS-R(30点満点) | 25〜28点に低下 | 日付の記憶、集中の持続 |
MMSE(30点満点) | 26〜29点に低下 | 計算、記銘、注意集中など |
とくにMoCAは前頭前野の働きを細かく見るテストなので、スマホによる脳疲労を最も鋭く反映しやすいです。
若い方でも「24点くらい」になることがあり、不安になって受診される方も少なくありません。
❗ でも「本当の認知症」とは違います!
ポイントはここです。
スマホ認知症は、構造的な脳の変性(萎縮)による認知症とは違い、「回復が可能」な状態です。
つまり、スマホを使う時間を見直したり、睡眠や生活リズムを整えたりすることで、検査の点数も元に戻ることがよくあります。
🔍 追加で使える評価法(医師が必要と判断した場合)
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TMT(Trail Making Test)A/B
→ マルチタスク処理能力や注意の切り替えを見る検査。
スマホ型疲労でTMT-Bの時間が延びやすいです。 -
Digit Span(数字の記憶テスト)
→ ワーキングメモリ(頭の中での一時的な記憶)を測るテスト。前頭前野の評価に有効。 -
心理検査(PHQ-9、HADSなど)
→ うつや不安も、脳の働きに大きな影響を与えるため、あわせて評価します。
🔄 治ります!スマホ疲労からの回復法
ちょっとした生活の見直しが、脳を守る第一歩です。
✅ スマホ脳疲労を回復させる3つの工夫
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夜1時間前からスマホOFF
→ 睡眠の質が改善され、脳の回復力が高まります。 -
1日15分「ぼーっとする時間」を作る
→ 脳を意識的に休ませる習慣を。 -
軽い運動を取り入れる
→ ウォーキングなどが前頭前野を活性化します。
多くの方は、1〜2週間程度で明らかな改善がみられます。
「認知症かも…」と慌てず、まずは生活を見直してみましょう。
🌸 最後に
スマホは便利な道具ですが、使い方によっては脳に大きな負担をかけてしまいます。
「もの忘れが気になる」「検査の点数が下がった」としても、それが“治るタイプ”の脳の疲れであることも少なくありません。
不安なときは、お一人で悩まず、お気軽にご相談ください。