いのうえ内科脳神経クリニックの井上です。

広島地方もついに梅雨入りになるかと思いきや

東北地方の梅雨入りが先のようです。

本日は楽天生命パークで広島対楽天戦でしたが、雨天のため中止。

残りの交流戦、がんばってほしいです!

慢性骨髄性白血病患者さんのメイギムザ染色による末梢血像です。多種の発育段階の骨髄球がみられております。
9番染色体にあるABL遺伝子が22番染色体にあるBCR染色体に転座してフィラデルフィア染色体を作ります。この染色体により白血病の原因となるBCR-ABL蛋白を作りチロシンキナーゼという酵素によって骨髄球の異常分化が始まります。 このチロシンキナーゼを特異的に標的にしたお薬がイマチニブ・ダザチニブ・ニロチニブ・ボスチニブなどになります。

もくじ

ボスチニブがレビー小体病に効果あり!

先日米国のジョージタウン大学からの報告です。

レビー小体病はテレビのCMでも取り上げられたこともあり耳にされたことあるのでは?

アルツハイマー病につぐ認知症の原因疾患です。

ボスチニブは動物実験でαシヌクレイン・タウ蛋白・βアミロイド蛋白というレビー小体病の原因と思われる異常たんぱくの合成を抑制することがわかりました。

ボスチニブ!

一般のかたを含め、お医者さんでもご存じのないかたいるかも?

これは神経変性疾患の治療薬ではなかったのです。

なんと

慢性骨髄性白血病の治療薬!

私が研修医のころ、血液内科をローテーションしていたときにも、同疾患に罹患されたかたを何人か担当させていただきました。

「残念ながら、治療法は骨髄移植しかありません。」

抗がん剤をたくさん使用して、結局は数か月数年後に亡くなる病でした。

ところが、

オブジーボと同じような分子標的薬の開発により

白血病で染色体異常を呈した部位のチロシンキナーゼ酵素活性を阻害するおくすりが開発されたのです。

イマチニブ(®グリベック)

ダサチニブ(®スプリセル)

ニロチニブ(®タシグナ)

ボスチニブ(®ボシュリフ)です

治療効果は

ダサチニブはイマチニブの30倍

ボスチニブはイマチニブの300倍ともいわれております。

その結果

日本では慢性骨髄性白血病患者さんの94%ものかたが生存できるようになったのです。

(残念ながら米国では医療費支払いができないという理由で60%位の生存率です)

そのボスチニブ

実は、筋萎縮症側索硬化症においても治療薬として現在研究段階なのです。

100%なおらないといわれていた慢性骨髄性白血病が治る時代になりました。

100%なおらないといわれている神経変性疾患が治る時代も早くきてほしいと願っております。

*ちなみに、片頭痛治療薬でもこの分子標的製剤は開発中です。

数年後に治療薬として保険収載されるのではと思っております。

【参考文献】

Fowler AJ et al.  Multikinase Abl/DDR/Src Inhibition Produces Optimal Effects for Tyrosine Kinase Inhibition in Neurodegeneration. Drugs R D. 2019 Jun;19(2):149-166. doi: 10.1007/s40268-019-0266-z.

Lee S et al.  The c-Abl inhibitor, Radotinib HCl, is neuroprotective in a preclinical Parkinson’s disease mouse model. Hum Mol Genet. 2018 Jul 1;27(13):2344-2356. doi: 10.1093/hmg/ddy143.