もくじ

MCIと認知症予防 ― 知って、対応を考えましょう

みなさんは「MCI(軽度認知障害)」という言葉をご存じでしょうか?
MCIは、正常な加齢による物忘れと、認知症の中間にある状態を指します。

たとえば、最近あったことを思い出すのに時間がかかったり、同じ話を繰り返してしまったりすることはありませんか?
このような症状がありながらも、日常生活はなんとか自立して行える――そんな状態がMCIです。

MCIは「認知症予防に取り組む最後のチャンス」ともいわれており、早く気づいて対策することがとても大切です。


MCIとは何か

MCI(Mild Cognitive Impairment)は「軽度認知障害」と訳されます。

  • 記憶力や注意力などに軽い障害がある

  • しかし、まだ日常生活には大きな支障がない

  • 認知症と診断されるほどの症状ではない

このような特徴があります。

研究によると、MCIと診断された人の約50%が5年以内に認知症へ進行するといわれています。
一方で、残りの人はMCIの状態を維持したり、元の正常な状態に戻る方もいます。
つまり、MCIの段階で気づいて対策すれば、認知症の進行を遅らせることも可能なのです。


認知症に進行するリスク要因

MCIや認知症の進行には、さまざまな生活習慣や病気が関わっています。

代表的なものは次の通りです。

  • 高血圧

  • 糖尿病

  • 高コレステロール血症

  • 喫煙

  • 運動不足

  • 社会的なつながりの不足(孤立)

  • 難聴

これらは「生活習慣病」と重なる部分が多く、心筋梗塞や脳卒中のリスクとも共通しています。
つまり、生活習慣を整えることは、認知症予防だけでなく全身の健康につながるのです。


認知症を防ぐためにできること

では具体的に、どのような生活習慣が効果的でしょうか。

1. 食事

「脳に良い食事」として注目されているのが 地中海食 です。
野菜、果物、魚、オリーブオイル、ナッツ類を中心に、肉やバターは控えめ。
日本食でも、魚・野菜・大豆製品を意識すると近い食事になります。

2. 運動

週に数回、息が弾むくらいの有酸素運動(ウォーキング、サイクリングなど)が推奨されています。
筋トレやストレッチも組み合わせるとより効果的です。

3. 社会活動

「人と話す」「趣味を楽しむ」「地域活動に参加する」――これらは脳の刺激になります。
孤立は認知症リスクを高めるため、できるだけ人とのつながりを保ちましょう。

4. 睡眠

質の良い睡眠は脳の休養に欠かせません。
寝る前のスマートフォンは控え、規則正しい生活リズムを意識しましょう。

5. 難聴への対策

難聴は認知症リスクの一つとされています。
聞こえにくさを感じたら、早めに耳鼻科を受診し、必要に応じて補聴器の活用も検討しましょう。


実際の患者さんの例

ある70代の女性は、数年前から「同じ話を繰り返す」と家族が気づきました。
診察の結果、MCIと診断。血圧やコレステロールの管理を始め、毎日30分の散歩を続けるようになりました。
その結果、物忘れはほとんど進まず、日常生活を元気に送られています。

このように、早めに取り組めば進行を遅らせることができるのです。


まとめ

  • MCIは「認知症予防のラストチャンス」

  • 半数は進行しますが、生活習慣を整えれば予防や改善の可能性もあります

  • 食事、運動、社会活動、睡眠、耳のケアが大切

「年のせいだから仕方ない」と思わずに、気になる物忘れがあればぜひご相談ください。
当院でもMCIや認知症予防についてご相談を受け付けています。