こんにちは。いのうえ内科脳神経クリニックの院長です。
明日5月10日から「愛鳥週間(野鳥週間)」が始まりますね。
街中でも、鳥たちのさえずりが心地よく響く季節になりました。
自然の音に耳を澄ませると、心が少し軽くなるような気がします。
しかし一方で、春は気圧の変化や新生活のストレスなどで頭痛の相談が増える時期でもあります。
「薬は飲みすぎるといけないって聞くし…でも我慢するのもしんどい」
そんなお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
今回は、頭痛薬とのちょうどいい付き合い方について、分かりやすくご紹介いたします。
もくじ
頭痛薬、飲んだ方がいい?我慢した方がいい?
〜飲みすぎも我慢しすぎも、実は頭痛の原因に〜
頭痛があると「薬を飲んでいいのか、我慢した方がいいのか…」と迷ったことはありませんか?
特に片頭痛をお持ちの方にとって、薬との付き合い方はとても大切です。
今回は
薬を飲みすぎると頭痛が悪化するって本当?
薬を飲まないとどうなるの?
という疑問にお答えしながら、適切な薬の使い方について解説します。
薬を飲みすぎると起こる「薬剤の使用過多による頭痛」とは?
トリプタン製剤を月に10日以上、または市販の鎮痛薬(アセトアミノフェンやイブプロフェンなど)を月に15日以上使用していると、薬そのものが頭痛の原因になることがあります。
これを「薬剤の使用過多による頭痛(Medication Overuse Headache:MOH)」と呼びます。
薬によって一時的に痛みが和らいでも、効果が切れるとリバウンドのように頭痛が再発し、さらに薬を使って…という悪循環に陥ってしまうことがあります。
📌 軽い頭痛が頻繁に起こる人が、その都度薬を内服することでも、MOHにつながるリスクがあります。
薬を「早めに飲まないと効かない」と不安になり、毎回のように内服している方は、注意が必要です。
でも「薬を全く飲まない」のも問題です
「薬に頼りすぎてはいけない」と我慢しすぎて、日常生活に支障をきたすほどの痛みを放置してしまうのも、頭痛を悪化させる原因になります。
強い痛みが続くと、それ自体がストレスとなって脳を刺激し、次の頭痛の“引き金(トリガー)”になることもあります。
つまり、薬の使いすぎも、使わなさすぎも、どちらも頭痛を長引かせる可能性があるのです。
片頭痛?緊張型頭痛?見分けが難しい方へ
片頭痛と緊張型頭痛は頭痛の始まりの感覚が似ていることがあり、見分けにくいという方も少なくありません。
そんなときの判断のヒントとして、
- お辞儀をしたときにズキズキと拍動性の痛みが強まる
- 頭を振ると痛みが響く・増す
といった症状がある場合は、片頭痛が始まりかけている可能性が高いです。
このような「悪化のタイミング」が明確になったときに薬を服用すると、効果が出やすく、薬の回数も最小限に抑えることができます。
頭痛の頻度によっては「予防薬」という選択肢も
片頭痛発作が月に2回以上ある方、あるいは生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある方では、予防療法の実施について検討することが推奨されています(『慢性頭痛の診療ガイドライン2021』より)。
予防薬は毎日一定量を服用することで、片頭痛の頻度や強さを抑える治療法です。
予防薬を使うことで、頭痛薬の使用回数も減らせる可能性があり、「薬剤の使用過多による頭痛」の予防にもつながります。
📝 参考文献:
- 日本神経学会・日本頭痛学会編『慢性頭痛の診療ガイドライン2021』
>「片頭痛発作が月に2回以上、あるいは日常生活に支障をきたす片頭痛が月に3日以上ある患者では、予防療法の実施について検討してみることがすすめられる(推奨度B)」
大切なのは「適切なタイミングと頻度」
頭痛薬は、症状が出始めたタイミングで、必要な分だけ使うことが大切です。
特に片頭痛では、痛みが軽いうちにトリプタンを服用することで、より高い効果が期待できます。
また、薬の使用頻度は以下を目安にしましょう:
- トリプタン製剤:月に10日未満
- 市販の鎮痛薬:月に15日未満
頭痛の記録をつけることで、薬の使用パターンや頭痛の頻度を客観的に把握でき、医師と相談する際にも役立ちます。
頭痛と上手につきあうために
- 「薬=悪」と思いすぎず、必要なときには正しく使う
- 我慢しすぎて日常生活に支障をきたさないように
- 頭痛が始まったときのサイン(お辞儀でズキズキ・頭を振ると響く)を把握する
- 月の頭痛日数や薬の使用回数を記録してみる
- 頭痛の頻度が増えてきたら、予防薬を含めて医師に相談する
「ちょうどいい使い方」が、頭痛とのより良い付き合い方につながります。
不安なことがあれば、どうぞお気軽にご相談くださいね。