皆さんこんにちは。
いのうえ内科脳神経クリニック院長、脳神経内科専門医・頭痛専門医の井上です。
「緑色は目に優しい」「自然の緑を見るとホッとする」——
そんなイメージをお持ちの方も多いと思いますし、実際それは医学的にも間違っていません。
ところが最近、「スマホやパソコンの緑っぽい光を見ていると頭が痛くなる」という声を患者さんからよく聞くようになりました。
同じ“緑”なのに、なぜリラックスできる場合もあれば、頭痛を引き起こすこともあるのでしょうか?
今回は、自然の緑とディスプレイのグリーンライトの違いについて、脳神経内科・頭痛専門医の視点からわかりやすく解説していきます。
片頭痛や眼精疲労に悩む方にとって、日常生活を見直すヒントになれば幸いです。
もくじ
【緑色は目に優しいはずなのに?】
グリーンライトが片頭痛の引き金になる理由
〜脳神経内科専門医が「色」と「頭痛」の関係を解説〜
こんにちは。
いのうえ内科脳神経クリニック院長、脳神経内科専門医・頭痛専門医の井上です。
「緑色は目に優しいと聞いたのに、グリーンライトが片頭痛の原因になるって本当?」
「自然の緑は癒されるのに、スマホの緑は頭が痛くなるのはなぜ?」
そんな疑問を抱いたことはありませんか?
今回は、「なぜ“緑色”が脳や目に優しい一方で、グリーンライトが片頭痛の誘因になることがあるのか」を、脳神経の働きと視覚刺激の観点から解説します。
■ 緑色は本来「安心」「調和」「癒し」の色
自然界の中でもっとも多く目にする色、それが「緑色」です。
森林、草原、観葉植物…。私たちの脳や心に安らぎを与える色であり、「目に優しい色」として古くから知られています。
この理由は、人間の視細胞(錐体細胞)の中でも「中波長(緑)に感受性の高いM錐体」が最も活発で、脳への刺激が過剰でもなく、乏しくもない“ちょうどよい刺激”として伝わるためです。
■ それでも“グリーンライト”が不快になるのはなぜ?
問題は、「自然な緑色」ではなく、「発光体から放たれるグリーンの“光”」にあります。
📱 具体的には:
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スマホやPCなどのディスプレイは、RGB(赤・緑・青)の光を混ぜて画像を表示しています。
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この「グリーン成分」は、高輝度で、網膜を直接刺激します。
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特に暗い部屋でディスプレイを見ると、コントラストが強調され、視覚神経の過剰反応が起こることがあります。
■ 脳の“視覚過敏”が引き起こす片頭痛
片頭痛患者は、視覚や聴覚、嗅覚などの刺激に対して脳が過敏に反応しやすい傾向があります。
これを「感覚過敏(sensory hypersensitivity)」と呼びます。
その中でも光刺激は最も強力なトリガーのひとつです。
🔍 研究報告より:
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ハーバード大学の研究(Bursteinら, 2016)では、ディスプレイの強い緑光は一部の片頭痛患者で頭痛を悪化させることが示されました。
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一方で、自然光に近い波長の「ソフトグリーン」はむしろ不快感が少なく、頭痛を緩和する可能性もあることがわかっています。
■ 「緑色が悪い」のではなく「緑の出し方」が問題
緑の種類 | 目や脳への影響 |
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自然の緑(植物・森など) | ◎ リラックス効果・視覚疲労の回復 |
ディスプレイの高輝度グリーン | △ 刺激が強く、片頭痛の引き金になることがある |
ソフトグリーンLED(調光された環境光) | ○ 比較的穏やかで、安全な場合も多い |
■ 頭痛を避けるためのディスプレイ対策
対策 | 説明 |
---|---|
輝度を下げる | 部屋の明るさに合わせてディスプレイも調整を |
ナイトモードの活用 | ブルーライトとグリーン成分を軽減 |
画面の注視時間を減らす | 1時間に1回は目を休める「20-20-20ルール」など |
偏光レンズや色覚調整メガネの利用 | グリーン成分を和らげる特殊レンズもあります |
■ まとめ
「緑色」自体が悪いわけではなく、問題は“どんな形で光として放たれているか”にあります。
自然の緑は脳を休め、ディスプレイのグリーンライトは過剰な刺激になる――
それが、頭痛専門医として多くの患者さんを診てきた私たちの実感でもあります。
もし「スマホやPCを見ていると頭が痛くなる」と感じる方は、視覚刺激が頭痛を引き起こしている可能性があります。
生活環境やディスプレイ設定を見直すことで、症状の軽減が期待できます。
当院では、片頭痛や視覚過敏、睡眠障害に対する診療も行っております。
お気軽にご相談ください。