皆さんこんにちは。
いのうえ内科脳神経クリニック院長の井上です。

「布団に入ってから、ついスマホをいじってしまう…」
「SNSや動画を見ていたら、気づけば深夜になっていた」
そんな経験、きっと誰にでもあるのではないでしょうか。

でもその“ちょっとしたスマホ時間”、実はあなたの睡眠の質を大きく下げているかもしれません
近年の研究では、スマートフォンやタブレットの画面から発せられるブルーライトが、「眠くなるホルモン=メラトニン」の分泌を妨げていることがわかっています。

今回は、脳神経内科専門医の視点から、スマホと睡眠ホルモン(メラトニン)との関係をわかりやすく解説していきます。
快適な眠りと、翌日の集中力を守るために、ぜひ最後までご覧ください。

もくじ

【スマホと睡眠】なぜスマホを見るとメラトニンが減るの?

〜脳神経内科専門医が解説する、眠れない理由〜

こんにちは。
いのうえ内科脳神経クリニック院長、脳神経内科専門医の井上です。

「寝る直前までスマホを見ていたら、なんだか寝つけない……」
「布団の中で動画やSNSを見ていたら、頭が冴えてしまった」

そんな経験、ありませんか?

今回は、「なぜスマホを見ると“眠くなるホルモン”=メラトニンが減るのか?」を医学的にわかりやすく解説していきます。


■ メラトニンとは?

メラトニンは、脳の「松果体(しょうかたい)」という小さな部位から分泌される睡眠ホルモンです。
夜になると自然に分泌が増え、私たちに「眠気」をもたらしてくれます。

メラトニンの役割:

  • 入眠を促す(体温・血圧を下げてリラックス)

  • 睡眠の質を高める(ノンレム睡眠をサポート)

  • 体内時計を整える(朝と夜のリズムづくり)


■ なぜスマホを見るとメラトニンが減るのか?

理由はずばり、スマホやタブレットの画面から出る「ブルーライト(青色光)」が、脳の体内時計を狂わせるからです。

▼ メカニズムはこうです:

  1. ブルーライトが目の奥に届く
     → スマホやLEDの光は、波長が短くエネルギーの高い「青色光(約450〜495nm)」を多く含んでいます。

  2. 網膜の“光受容体”が刺激される
     → 特に、網膜にある「メラノプシン」という光感受性色素が青色光に強く反応します。

  3. 視床下部にある“体内時計の中枢”が刺激される
     → この中枢は「視交叉上核(SCN)」と呼ばれます。

  4. 脳が「まだ昼間だ」と錯覚する
     → 暗くても、ブルーライトによって“昼”だと誤認してしまうのです。

  5. 松果体に「メラトニンを出すな」という指令が出る
     → その結果、メラトニンの分泌が止まり、眠気が起こりにくくなる


■ 視交叉上核(SCN)とは?

このSCN(Suprachiasmatic Nucleus)は、視神経のすぐ上にある部位で、私たちの“生体リズム(サーカディアンリズム)”を司る司令塔です。
ここが明るさの変化を受け取り、「今は昼か夜か」を脳全体に伝えます。


■ 夜のブルーライトがもたらす影響

影響 内容
メラトニン抑制 寝つきが悪くなる、眠りが浅くなる
概日リズムの乱れ 夜型化、朝起きられなくなる
自律神経の乱れ 寝ても疲れが取れない、だるさや不安感
認知機能低下 記憶力・集中力の低下(スマホ認知症の一因)

特に、暗い寝室でスマホの明るい画面を至近距離で見ることが最もリスクが高く、脳への刺激は日中以上に強くなります。


■ 対策:スマホと上手に付き合うために

対策 説明
寝る2~3時間前からスマホを控える メラトニンの自然な分泌を促すための“準備期間”
ブルーライトカット機能を使う ナイトモード、暖色系フィルターなどを活用
朝起きたらすぐ太陽光を浴びる 視交叉上核をリセットし、夜にメラトニンを出しやすくする
紙の本や音声コンテンツに切り替える 視覚刺激を減らして入眠をスムーズに

■ まとめ:スマホは「眠りの敵」にも「味方」にもなる

スマートフォンは非常に便利な道具ですが、使い方を間違えると「脳に昼と夜を誤認させ、眠れなくする装置」にもなり得ます。

眠れない夜が続くと、体内時計がずれ、生活リズムが乱れ、さらには認知症リスクやうつ状態の引き金になることもあります。

「寝る前の1時間はスマホを閉じる」
それだけで、明日のパフォーマンスが変わるかもしれません。


当院では、睡眠障害や認知症予防、頭痛や倦怠感の診療も行っております。
スマホや生活リズムとの付き合い方が気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。