もくじ
片頭痛と認知症
先日、このようなタイトルで頭痛セミナーを受講しました。
えー、片頭痛は認知症になるの?
と、不安になられたかたもいらっしゃるかもしれません。
片頭痛はあくまで危険因子の一つの可能性があると言うことです。
難聴、運動不足、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、
そして、片頭痛と関連する可能性が高いのが脳血管性認知症です。
認知症と片頭痛の関連はあるのか?ないのか?
2013年にNeuroepidemiologyに発表された論文です。
台湾における片頭痛患者さんの認知症発症リスクのコホート研究です。
コホート研究とは対象となる患者さんを一定期間追跡する研究です。
それによると、片頭痛がある群では認知症の発症率が高くなるようです。
片頭痛患者さんは、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、頭部外傷、うつ病の有病率が高かったため、これらのリスク因子を調整しました。
結果は、片頭痛の患者さんは正常に比較して認知症の発症リスクは1.33倍になりました。
【参考文献】Chuang CS et al. Migraine and risk of dementia: a nationwide retrospective cohort study. Neuroepidemiology 2013;41:139-45.
健康なかたの脳のようです。脳は虚血などにより変性すると、深部白質という黒くみえる部分に白い部分がみえます。この画像では深部白質病変は観察できません。
片頭痛と脳卒中との関連
以前より45歳未満の女性の前兆のある片頭痛患者さんの脳梗塞のリスクが高いと言われております。
Lancet Neurologyに掲載された論文の内容です。
片頭痛全体では
女性の片頭痛患者さんは2.08倍のリスクがあり
それだけでも結構高いのですが、
そのなかで女性ホルモン剤を使用するとリスクは7.02倍になります。
さらに、45歳未満の片頭痛患者さんで喫煙をするとリスクは、なんと9.03倍にもなります。
前兆のある片頭痛の患者さんでは、リスクは2.16倍
女性ホルモン剤を使用するとリスクは10.0倍になるとのことです。
つまり、
45歳未満の若年者で、前兆のある片頭痛は脳卒中のリスクであり、片頭痛の早期診断、積極的な治療介入が白質障害を緩和させる可能性があります。
喫煙、ピル、生活習慣病などの片頭痛関連の脳卒中のリスク因子の改善は、特に血管障害性認知症の予防に重要!
【参考文献】Kurth T et a. Migraine and stroke: a complex association with clinical implications. Lancet Neurol. 2012;11:92-100.
珍しい病気で、CADASIL(カダジル) という脳血管性認知症をきたすものがあります。
このような病気は、
55歳以下で発症するといわれております。
片頭痛様の症状は20代から30代が多いようです。
片頭痛様と書いたのは、片頭痛は一次性頭痛であり基礎疾患がないからです。
CADASILは基礎疾患ですが、20代から30代の患者さんの脳には大脳白質病変を認めるものの生理的な虚血病巣が年齢のわりに強いといった程度のこともあります。
つまり、20代から30代の発症時にCADASILを診断することは、非常に困難です。
診断ができないこの年齢の患者さんは前兆のある片頭痛と診断する傾向があります。
CADASILと診断するには
以下の二つ以上の臨牀症候が必要です
1.皮質下性認知症、錐体外路症状、偽性球麻痺の一つ以上
皮質下性認知症とは、大脳の白質の病変による認知症です。
脳の周囲は灰白質という大脳皮質で白質を囲い込むように覆われています。
白質病変の認知症の場合、記憶障害にくわえて、感情や行動に変化がでやすいです。
2.神経症候をともなう脳卒中様発作
顔面麻痺、手足が動かなくなる、呂律困難などの神経症後をともなう発作です。
3.うつ症状
4.片頭痛(と書いてますが、正確には片頭痛様頭痛)
あとがき
まだまだ、脳血管性認知症に関しては、まだまだ多くの疾患があります。
片頭痛のコントロールは若い患者さんが多くて、現在は頭痛以外に健康なかたが多いです。
彼女、彼らたちの未来のためにも頭痛コントロールを真剣におこなっていきたいと意をあらたにしております。