もくじ

広島市内でクリニックを開業しております。

先週から大雨が広島を含み西日本中心に各地に災害をもたらせております。

私の親戚のクリニックでも人工透析に必要な水の確保に自衛隊からの援助を借りております。

日に30トンもの水分確保をしないと、人工透析中の患者さんの命が脅かされます。

被災されたみなさまならびにご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げます。

皆様の安全と被災地の一日もはやい復興を心よりお祈り申し上げます。

本日は定期ブログ更新ということで熱中症について書いてみました。

被災地のかたがたも含め熱中症予防は大切なことだと思います。

この記事が少しでもみなさまのお役にたてれば助かります。

日常生活に潜む熱中症を予防しましょう 基礎知識と応急処置の方法

地球の気温は、1885年から2012年までに0.85℃上昇しています。

2085年~2100年までに最大で4.8℃上昇すると予想されています。

温暖化の影響は、砂漠化、資源の影響、異常気象の増加だけではありません。

健康障害の一つに「熱中症の増加」が挙げられます。

厚生労働省の「人口動態」を元にしたデータ※によると、1968年から最高気温が上昇した1994年以降、「熱中症死亡者数」が急増していることが分かります。

また、熱中症は野外のスポーツ活動中に発生していると思いますが、屋内などあらゆるシーンで起こる危険性があります。

日常生活の中にもリスクが潜む「熱中症」の基礎知識、予防、応急処置の知識を持ち、来たる夏本番に備えましょう。

環境省「熱中症環境保健マニュアル」http://www.wbgt.env.go.jp/pdf/envman/full.pdf

 

熱中症とは?

少し昔には、屋外での太陽からの日射が原因で起こる症状を「日射病」と呼んでいました。

近年では、暑熱(しょねつ)環境で起こる症状を総称して幅広く「熱中症」と呼んでいます。

ヒトは体温を一定範囲に保つ恒温動物です。

体温を保つために、脳にある視床下部、皮膚、内臓、関節などにある温度受容器を使って、さまざまな調整反応を起こしています。

調整反応とは、暑いときに起きる「発汗反応」、寒いときに「震え反応」や「非震え反応(ノンアドレナリンによる代謝の増加)」を引き起こすことです。

こういった「自律性調整反応」と着衣や冷暖房などの「行動調整反応」で体温を維持しています。

しかし、あまりにも温熱ストレスが強いと体温調整がうまく機能しなくなることがあります。

このとき、高体温、脱水、塩分欠乏などの障害が生じてさまざまな症状が発生します。

熱中症の症状「病態・重症度」と応急処置

熱中症の症状は3つに分類され、症状によって【熱失神・熱けいれん・熱疲労・熱射病】の4つに分けられます。

どの症状か分からなくても、「自分で水分が摂取できない」、「意識がない場合」はすぐに病院に搬送してください。

また、熱中症は重症に移行することがあります。

頭痛、吐き気、倦怠感がある場合は、病院で治療を受けることをおすすめします。

■分類Ⅰ度(軽症)

・熱失神…頻脈(心拍数の増加/毎分100回以上)、顔面蒼白、めまい、立ちくらみ、数秒間の失神などが起きます。

血圧の低下、脳への血液不足の状態です。

⇒応急処置…水分(スポーツドリンク・経口補水液)が補給できる状態なら、少しずつ飲ませます。

直射日光を避け、風通しの良い場所に移動させます。

仰向けに寝かせ、衣類をゆるめます。

頭を高くしません。

下肢を高くして、脳に行く血液を増やしてあげます。

失神して、意識がはっきりしないなど不自然な場合は、すぐに救急車を呼んで病院で治療を受けてください。

・熱けいれん…ナトリウム(塩分)不足により、こむら返り、筋肉の痛みや硬直が起きます。

全身のけいれんはこの段階では見られません。大量の発汗、喉の渇き(口渇感)、吐き気などの症状があり、体温が高くなっています。

⇒応急処置…熱けいれんの場合は、いくら筋肉を伸ばしても何度も再発します。

スポーツドリンクなどの塩分を含んだ飲料やアメなどの食品を摂取させます。

塩分補給後に治らない場合は、病院での治療が必要です。

炎天下のハイキングなど運動の予定があれば、1リットルの水と塩2グラムで作った食塩水を持参しておくといいでしょう。

■分類Ⅱ度(中等症)

・熱疲労…体重比2%の脱水(水分と塩分などの電解質)の損失で起こる可能性があります。

めまい、頭痛、吐き気、失神、疲労感、虚脱感などの症状。長時間の野外での労働やスポーツなど大量の発汗で症状があらわれる可能性があります。

⇒応急処置…吐き気がなければ、水分を補給させます。

首、ワキ、股は動脈が皮膚に近いのでアイスパックなど服の上から冷やすと効果的です。

熱射病の疑いがある人が倒れた、意識がない場合は、周りに「一次救命処置」ができる人を探してください。

協力者が見付からないときは、すぐに救急車を呼びます。

熱疲労は分類Ⅲの「熱射病」に移行する危険性があります。絶対に放置しないでください。

■分類Ⅲ度(重症)

・熱射病…体温が40℃を超え、おかしな言動、行動などの意識障害、または意識がない、過呼吸、全身のけいれんなどが起きます。

高体温にもかかわらず、発汗しません。全身の臓器障害により死亡することがあります。

⇒応急処置…1秒でも早く医療機関にバトンタッチする必要があります。

救急車がくるまでの間、氷や水などを使って強制的に身体を冷却します。

また、体を横向きにして嘔吐物による誤飲に注意します。

意識がない場合は、心肺蘇生を実施して意識の回復をはかりましょう。

「熱中症」の年代別予防

「熱中症」は、炎天下の激しい運動中や屋外のハードワークに起きるとは限りません。

気温25℃未満でも「熱中症」が起きる危険性があります。

身近なところで、あらゆるケースで起きています。

乳幼児は、新陳代謝が活発で平熱が高めです。

暑さによる体調不良も訴えられません。

ベビーカーは地面に近く、照り返しの影響を受けやすいので、ベビーカーにひさしを付け、赤ちゃんに帽子をかぶらせましょう。

顔色が悪い、くちびるが乾いている、おしっこが少ないなどのサインがないかの気配りが大切です。

家に帰れば、お母さんは家事仕事で汗びっしょりです。

台所で火を使うさいには、常に換気扇を回して高温になることを防ぎます。

住居の高温多湿をできるだけ避けるように、通気性に気をつけることも大切です。

そして、高齢者になると体温調整の働きが低下して発汗や血液循環の機能が低下していきます。

喉の渇きを感じにくくなっています。

周囲のサポートで気温の変化に対応してあげてください。

屋外の仕事は、休憩がいつでも取れるわけではありませんが、定期的な水分補給や濡れタオルや保冷剤で首やワキを冷やすことで熱中症を予防できます。

デスクワークでも、熱中症は発生します。直射日光をさえぎり、エアコンのこまめな調整が必要です。

子どもの部活動では野球やサッカーなどの屋外スポーツだけでなく、バスケットボールなどの屋内競技にも注意が必要です。

急に暑くなると、体が慣れていないので「熱中症」が起こりやすくなります。

約15分~20分に1回の割合で水分を補給すると熱中症の予防になります。

 

「熱中症」は最悪、死にいたる危険な症状です。

毎年、避けられた事故が起きています。

集団行動では、先生や保護者が率先して予防に配慮することが重要です。

家族、周囲で声を掛け合って、夏を乗り切りましょう。