もくじ
今年のインフルエンザはひどいかもしれません
インフルエンザってひどい頭痛を伴い1週間くらい続くことがあります。
発熱や喉の痛みはなくなったのに、頭痛と咳だけというのも多いです。
そのため頭痛の原因精査に当院に受診される方もいらっしゃいます。
そのような経過で受診されたかたの9割以上がインフルエンザ後の頭痛です。
アセトアミノフェンという解熱剤で通常は軽快します。
このようにインフルエンザはひどい症状を呈し、普通の風邪(かぜ)とは異なると考えております。
一方、普通のかぜと同様に数日で発熱・倦怠感などの大きな症状は治ることがほとんどなので、それほど騒がなくてもよいという風潮もあります。
しかし、我々が騒ぐには理由があります。インフルエンザは死に委たる可能性があるからです。
インフルエンザが流行するほど、重篤な合併症を呈する患者さんの数は増えます。
なんと、80歳以上のインフルエンザ罹患者さんの1割は日本人の死亡原因の上位である肺炎を合併します。
また、インフルエンザ脳症といって意識障害をきたし、場合により認知障害を後遺症として残したり、生命をおびやかしたりします。
インフルエンザウイルスは心筋にも感染します。インフルエンザ心筋症は心臓の機能をマヒさせます。
若い方のインフルエンザの99%は恐ろしい病にはなりませんが、まれに。
某総合病院で勤務していたころ、20代の女性の意識障害の原因を調べてほしいと集中治療部から依頼がありました。
患者さんは人工心肺につながれ意識障害をきたしておりました。ベッドサイドには生まれたばかりの患者さんの赤ちゃんの写真と、応援メッセージが飾っておりました。
インフルエンザに罹患後に、インフルエンザ心筋炎になり、病院にかつぎこまれたとのこと。体外循環装置(人工心肺)をつかい一命をとりとめて意識もはっきりしていたにもかかわらず、意識障害が出現。
頭部CTの検査、髄液検査などからインフルエンザ脳症と診断し治療を開始しました。
しかし、インフルエンザには現代医学の力は勝てず患者さんは亡くなりました。
そんな、恐ろしい病気がインフルエンザです。
予防をすることをもっと意識しましょう。
人類の歴史は感染症との戦いといっても言い過ぎではないかもしれません。
傷寒論(しょうかんろん)の時代(中国後漢のとき)から、ペスト、ハンセン病、結核、スペイン風邪、エイズ、エボラ出血熱など現在も常に戦ってます。
予防接種では天然痘を人類の叡智で撲滅することができました。
エイズも死に至る病からHIVのときから治療する時代になりました。
インフルエンザは多くの方の症状は死にいたりません。
もしかしたら予防についてまだまだ我々は甘いのではないでしょうか?
空港で検閲するようなエビデンス(証拠となる研究)のない行動をすることもあった我が国ですが、予防についてはどの程度、認識してますか?
それは、一個人のためというよりインフルエンザを広げないためにです。
若いかたは99%以上の確率で生命をおびやかすことにはなりませんが、一人一人が予防を怠ることによりインフルエンザが拡大するのです。
その結果、肺炎、脳症、心筋炎で亡くなるかたも多くでてくるのです。
それがわれわれになることは可能性は低いですが、是非真剣に予防をしていただきたいと願います。
情けは人の為ならず。
ある人はインフルエンザに罹患したこともないので、インフルエンザ予防接種の効果がないといわれ、予防接種をされないかもしれません。
普通のかぜだと思ってマスクもせず人ごみにでて平気でくしゃみをしているかもしれません(かぜでもマスクはエチケットですね)。
インフルエンザは症状がでないこともあります。
不注意な我々が死にいたるインフルエンザウイルスを撒き散らしていると思ってください。
きちんと予防接種を受けて、人混みはさけ、マスクをし、うがいと手洗いを実行し、睡眠時間もきちんととるようにし少しでも感染者が少なくなるようにしましょう。
感染症に対応する原点に我々はもどる必要があると思います。