長時間同じ姿勢は緊張型頭痛に悪いばかりでなく、なんと死亡率にまで影響があります。

2012年にも米国の医学誌JAMAで、「1日に11時間以上座っている人は、4時間以下の人よりも死亡リスクが40%高くなる」と発表されております。同様の追試が世界中で研究されておりますが、2017年9月12日に米国、コロンビア大学医学部のディアス博士らが米国内科学会誌Annals of Internal Medicineに「長時間座り続けると死亡リスクが増す」という研究結果を発表しました。

長時間同じ姿勢で死亡するとなると「エコノミー症候群」が知られてます。エコノミー症候群は国際線の飛行機などで長時間同じ姿勢で座っていると下腿部に血液がうっ滞し、静脈内に血液が固まり血栓を作りそれが肺に飛んで肺梗塞(はいこうそく)になることです。震災などで車内泊をした結果、エコノミー症候群になり亡くなられる方もいらっしゃいます。今回の研究によって、このような急性期疾患ではなく、長時間座り続ける生活をすることによって4大疾患である心血管疾患、がん、慢性呼吸器系疾患、糖尿病を引き起こすことになるという結果がでました。長時間座る生活は世界中で年間約320万人の死亡原因になっていると推測されました。

*WHO(世界保健機関)の調査によると、現代人の4大疾患(心血管障害、がん、慢性呼吸器系疾患、糖尿病)を引き起こす主な要因は、喫煙や偏った食生活、運動不足、アルコールの飲みすぎとされてきておりました。

この論文は、45歳以上の白人と黒人合わせて7985名の日常動作を四年間(中央値)にわたり追跡しました。

対象者の臀部(おしり)に加速度センサーを付けて、坐位で過ごす時間を計測しました。研究期間中に死亡した人の数は合計340名でした。

坐位の時間が一日に12.5時間以上の人は、すべての疾患において死亡率が増えていたようです。

坐位をいかに少なくするかですが、私のような診察室に座ってばかりいる仕事の方で坐位を少なくすることは困難です。そこで、坐位をしながら運動をすることを提案します。航空会社が飛行機の乗客にエコノミー症候群予防のためのストレッチを推奨するのと同じことです。

仕事をしながら、座りながらできる運動をすることがよいと思います。足首を伸展屈曲させたり膝を持ち上げたり、両膝を合わせてみる、下肢を持ち上げたりするのがよいです。ただし、これらの方法で死亡率を下げるというエビデンスはありません。可能な限り坐位の時間を短くする努力も行うようにお願いします。

 

【参考文献】

Ann Intern Med. 2017 Oct 3;167(7):465-475. doi: 10.7326/M17-0212. Epub 2017 Sep 12.
Patterns of Sedentary Behavior and Mortality in U.S. Middle-Aged and Older Adults: A National Cohort Study.
Diaz KM, Howard VJ, Hutto B, Colabianchi N, Vena JE, Safford MM, Blair SN, Hooker SP.