いのうえ内科脳神経クリニックの井上です。
今年も一年間に当院に頭痛患者さんが多く来ていただきました。
片頭痛患者さんは959名いらっしゃいました。
薬剤の使用過多による頭痛という難治性頭痛の患者さんは159名でした。
もくじ
当院の薬剤の使用過多による頭痛の治療法を本日は公表いたします。
少しでも頭痛患者さんのQOLが向上されることを心より祈っております。
頭痛に悩まされているかたの頭痛は薬剤の使用過多による頭痛?
頭痛でつらい思いをしている方は多いと思います。
そのなかでも頭痛に悩まされているかた。
多くのかたはお薬をのんで対応されています。
そしてそのお薬を多量にのんでしまいます。
そのようなかたがおちいってしまう病気が薬剤の使用過多による頭痛です!
毎日飲む量は一定です。
使用書に書いてある量以上は飲んでません。
なのに使用過多!と病院では診断されてしまいました。
彼女(彼)たちの多くのかたは、お薬を飲まないとあのひどい頭痛がくるという不安感におちいってます。
この頭痛を治す方法はただひとつ。
毎日飲んでいたお薬を中止すること!
患者さんに説明をするときに注意をしないといけません。
禁句は
毎日飲むようになったあなたが悪いのです!
これをいってはおしまいです。
でも、医療関係者でも頭痛診療をよく勉強してないとこのように思い込むかたが多くいます。
肥満のかたの生活習慣病に少し近いです。
肥満にはなりたくてなる方は多くはないのではないでしょうか?
同じように薬剤の使用過多も、お薬を飲みたくて飲んでいるわけではないのです。
20才の女性のかたが来院されました。
頭痛で薬を飲むようになったのは高校生ぐらいからです。
その時は1ヶ月に1回飲むか飲まないかぐらいの間隔でした。
この時は 片側だけ痛くてズキンズキンと脈を打つような痛みでした。
でも鎮痛剤を飲んだら治るので特に病院には行くことはありませんでした。
ある日、朝から睡眠は十分とったのに眠い、あくびがでる。
肩が凝ってきました。
そして学校に登校。
学校の試験中に頭痛がきました。
「いつも持ち歩いてたはずの鎮痛剤がない!」
最近頭痛がこないのでお薬を鞄に入れ忘れてました。
試験問題に集中することはできず。
頭痛は30分位すぎたところでピークになり吐いてしまいました。
保健室で休み、その日は試験を受けずに帰宅。
このようなことは二度と経験したくない。
「わたしは頭痛の前にいつも肩が凝るんです。」
ということで彼女は肩がこるたびにお薬を飲むようになりました。
今年になってお薬を飲んでも頭痛がおこるようになりました。
そしてほぼ毎日といっていいように頭痛がおこり週に一回は嘔吐するようになりました。
診断
前兆のない片頭痛
薬剤の使用過多による頭痛
典型的な薬剤の使用過多による頭痛のパターンです。
まず通常の片頭痛を発症します。
ある日、酷い頭痛を経験します。
そのときお薬を飲み忘れたとか、飲んでも効かないなどです。
その後、そのような頭痛がおこることが不安になります。
頭痛薬を頭痛の予兆期や軽いときからすぐに飲むようになります。
治療
1 薬剤使用過多による頭痛は重篤な疾患であることを説明します。
お薬を飲まなかったらいいだけと、軽く説明をしません。
普通のひとはお薬を飲むのを我慢することはできません。
場合によっては二週間くらい入院してお薬を断薬する必要があります(当院でも年に1人くらいは入院治療の必要がある患者さんに出会います。)。
2 今後の見通しについて説明
最初の三週間が最もしんどいこと、二ヶ月もすればびっくりする位よくなることを説明します。
目標があれば現況がしんどくてもがまんできる。
3 内服は片頭痛の特効薬としてのトリプタン製剤と鎮痛薬を処方します。
そのお薬を制限かけて飲むように指導します。
つまり、週のうちの三日間のみ飲んでもいいよ。
一週間のスケジュールをみてみましょう。
私の場合は週に二日は木曜日と土曜日の半日勤務です。
つまり、月曜日、火曜日、水曜日、金曜日に頭痛がくると我慢できないかもしれません。
そのなかで水曜日は翌日が半日勤務なんで少し頑張れるかも。
月曜日と火曜日にはトリプタン製剤と鎮痛剤を飲みます。
水曜日は鎮痛剤のみ飲みます。
だったら金曜日はどうすればいいの?
休みにしましょう。
あるいは頭痛がでて我慢できなかったら早退しましょう。
休むのは多くてもおそらく二回くらいです。
なぜならお薬を飲もうと決めていた日に頭痛がこない、あるいは我慢できるからです。
そうすれば金曜日にお薬を飲んでよい日ができるのです。
大丈夫だ 心配するな なんとかなる
一休宗純
4 毎日飲む基本薬を処方します。
漢方薬と片頭痛予防薬です。
これは、患者さんによっていろいろなパターンがあります。
お医者さんに相談しましょう。
5 鎮痛剤・トリプタン製剤以外で頭痛が来たら飲めるお薬を処方します。
漢方や筋弛緩剤や抗不安薬や睡眠薬です。
抗不安薬や睡眠薬はエチゾラムというベンゾジアゼピン薬を処方していただきます。
ベンゾジアゼピン薬は依存性があるお薬なのでできるだけ飲まないようと言って処方します。
毒をもって毒を制す
悪を除くために別の悪を利用することですね。
つまりあなたがいまで飲んでたお薬(毒)を飲まない代わりに別の毒(ベンゾジアゼピン薬)を飲んでしのぐのです。
この中で、3の曜日を決めるっていうのは少し複雑ですね。
でも実際だまされたと思ってお薬を飲んでいい日と飲まずがんばる日を決めてみてください。すると人は我慢できるものなんです。
明日からずっと三週間お薬を我慢しなさいでは我慢できなくても、
今日だけがまんしようと思えば我慢できるものです。
6 頭痛薬がない世界もあることを忘れないで
頭痛薬がなかったときにどうしますか?
こめかみを冷やしたり、写真の女性のようにこめかみをおさえたりしてしのぎます。
お薬はないとあきらめ開き直る気持ちも大切です。
まとめ
薬剤の使用過多による頭痛について紹介しました。
20歳の女性患者さんの例をとりあげました。
当院で実際行っている薬剤の使用過多による頭痛への対処法を記載しました。