わたしどもは、広島で脳神経を中心に内科疾患を診療しております。
薬剤の使用過多による頭痛には注意ですが。
痛くなったらすぐセデス!
頭痛にバファリン!
これも片頭痛の立派な治療法ですが、これらの市販薬は効果がないこともあったりします。
また、十分の効果がないためだらだらと数多く使うこともあります。
また市販薬のなかには常習性になりやすい薬品が配合されている場合もあります。
もくじ
市販薬の効果がいまひとつのかたは、トリプタン製剤という片頭痛の特効薬があることをお忘れなく。
それと、市販薬で効果ない頭痛や月に6日以上あるような頭痛は片頭痛のような一次性頭痛でない可能性もあります。
一次性頭痛とは画像検査や血液検査などの検査では異常がない頭痛です。
そのようなかたは、是非頭痛専門医を受診されることをお勧めします。
トリプタン製剤を紹介する前に、
昔、痛みどめなどがなかった時代は片頭痛をどのように対応していたのでしょうか?
時は江戸時代。
庶民の文化が花開き川柳などがよく詠まれてました。
「寝過ごして 嫁梅干を 顔へあて」という川柳があります。
うっかり寝坊をしてしまったお嫁さんがいます。
きっと寝過ぎたのでしょうか(片頭痛は睡眠過多で誘発されることがあります)
頭が痛いから梅干をこめかみにはっていたのかと思います。
ほかにも、
「梅干を 二合目にはる 富士額」という川柳もあります。
二合目っていうのはこめかみを指します。
富士額(ふじびたい)ってご存知ですか?
昔、美人の条件としていた額と髪の生え際の形が富士山のようになる額ですね。
片頭痛に悩む、富士額のかわい女性を詠んだ川柳です。
このように、江戸時代は片頭痛の特効薬は梅干しでした。
梅干しが効果あるかは現在は検証されてなく不明です。
いまは、セデスやバファリンなどの優秀な市販薬やトリプタン製剤があるのですね。
トリプタン製剤
・マクサルト 後発品名(薬品名) リザトリプタン OD錠とふつうの錠剤があります。
OD錠は口の中にいれると唾液で溶けますが吸収されるのは胃からです。
心臓発作のときのニトログリセリンは舌下粘膜から吸収されまるがそのような速効性は期待できません。
・イミグラン 後発品名(薬品名) スマトリプタン 錠剤と点鼻薬と注射薬があります。
錠剤は通常30分位して効果ありますが、点鼻薬は鼻粘膜から吸収されるので、速効性があり15分位で効果がでます。
さらに注射は自分で皮下に注射するのですが、5分位で効果がでます。
・ゾーミッグ 後発品名(薬品名) ゾルミトリプタン 錠剤とOD錠があります。
・レルパックス 後発品はありません。一般名はエレトリプタンです。錠剤のみです。
・アマージ 後発品はありません。一般名はナラトリプタンです。錠剤のみです。
片頭痛には効果のあるトリプタン製剤ですが、効果のないかたは以下の点に注意です。(患者さんは自己判断でなくかかりつけ医の指示にしたがってください)
・その頭痛は本当に片頭痛だったのか
・お薬を飲むタイミングはよかったか?
早すぎなかったか? これは、緊張型頭痛があり続いて片頭痛がくる場合や予兆としての肩こりや首こりを頭痛と勘違いして内服するなどでタイミングを外すことがあります。
遅すぎでは?起床時に頭痛などです。
・血中には薬剤は溶けているか?
つまり、吐き気は嘔吐があれば胃袋は動いてませんのでお薬は血液中に吸収されてません。
対策 最初から最大量のトリプタンを使用したり、点鼻や自己注射をします。
ドンペリドン・メトクロプラミドなどの制吐剤や五苓散などの漢方薬を使用します。
・月経時片頭痛でなかったか?
月経時片頭痛は消炎鎮痛剤と合わせて飲むことが推奨されております。
またアマージ(ナラトリプタン)がトリプタンのなかで最も効果あると言われております(個人差あり)。
・初回のトリプタン製剤で結論をだしてないか?
一回で効果なくとも三回目で有効というケースもあります。
最低三回はチャレンジしてみてください。
無効ならほかのトリプタン製剤をこころみる必要があります。
トリプタン製剤を使用するタイミング
頭痛がきたらすぐに使用するのが理想的です。
ただし、片頭痛の患者さんにかぎらず緊張型頭痛を合併しているかたは多くどんな頭痛でもトリプタンで対応していると大変なことになることがあります。
緊張型頭痛は一般に日常生活に支障がない頭痛ですのでこの頭痛でトリプタンを使用しても効果はありません。
片頭痛であるかの決めては
・頭痛が時間経過とともに酷くなる
カメさん型とうさぎさん型があるといわれております。
カメさん型は頭痛がはじまって数時間かけてしんどい頭痛になるタイプ。
うさぎさん型は頭痛がはじまって30分もしないうちにしんどい頭痛になるタイプです。
・頭痛の前に前兆期や予兆期がある
前兆期ですが、頭痛のおこる前の5分から1時間のあいだに「閃輝暗点(せんきあんてん)」という光が見えたり視野の一部が欠損するようなこと、
めまい感が生じるなどがあります。
片頭痛の患者さんの五分の一から四分の一くらいのかたしか前兆は経験しません。
でも、この前兆があって頭痛がおこればまず片頭痛です。
予兆期ですが、片頭痛の患者さんの半分以上のかたが経験するといわれております。
頭痛のまえ30分から二日位から、倦怠感、食欲増進(空腹感)、肩こり、くびこり、憂鬱(ゆううつ)感、あくび(ねむけ)などがおこります。
これらの前兆や予兆がおこれば、その後におこる頭痛は起こり始めは軽くても片頭痛です。
起こり始めにトリプタン製剤を使用してください。
前兆や予兆のときにトリプタン製剤を使用したい。
このような患者さんは、頭痛がきてしまってからだと効果がないといわれるかたに多いです。
しかし、臨床試験の結果は前兆期や予兆期のトリプタン製剤使用は効果が減弱するとなっております。
個人差がもちろんありますので、月に一回のみ生理の前にのみ頭痛がくるかたなどは予兆期でのトリプタン製剤が推奨されることがあります。
ここは頭痛専門医が得意とする判断になりますのでよく相談されてください。
片頭痛でも鎮痛剤(ちんつうざい)のみで治まる場合とトリプタン製剤が必要な場合がある
専門医でもトリプタン製剤は早く飲まないと効果がないと説明して、遅く飲むときは鎮痛剤を飲ませるようにされるかたがいらっしゃいます。
間違いだと思います。
たしかに早く飲めれば効果の期待は高いのがトリプタン製剤ですが、鎮痛剤のほうがその傾向は強いのです。
トリプタン製剤は逆に、少々遅くても効果は十分期待できますし、ピークでの効果もある場合があります。
ですので、軽いときに鎮痛剤を飲むことで頭痛をぴったり抑えれるかたがいらっしゃいます。
そのようなかたの場合には、トリプタン製剤を飲むタイミングはすこし痛みが強くなってからとなります。
前述したカメさん型と頭痛の場合です。
頭痛が強くなるときに頭を左右に振ってみたり、お辞儀をする動作をしたときに頭痛が酷くなるというのを感じるポイントがあります。
このポイントでトリプタン製剤を使用するという方法もあります。