もくじ

五感を使用すること、ウォーキングは体の健康のみならず認知症リスクを下げる!

脳トレは軽度認知障害や認知症の成人には有効でないという論文と、認知症の危険因子についてまとめた論文を紹介します。

脳トレも非常に良い印象がありますが、認知症の危険因子についての論文の結果からは、

五感を使用すること、体を動かすことの素晴らしさがさらに強調された感があります。

脳トレ(cognitive training)の有効性を、11個の試験をまとめて解析され検証されました。

その結果、

認知機能が正常な高齢者においては脳トレによって認知機能の改善がみられました。

エビデンス(証拠となる研究)レベルは中等度、つまり信頼がある程度は持てる、です。

しかし、アルツハイマー病などの認知症まではいかないけど軽い物忘れがある方、

軽度認知障害(MCI)の成人では

脳トレによる認知能力への効果は示されませんでした。

エビデンス(証拠となる研究)レベルは低強度、つまり信頼が持てない、です。

この結果からも、認知症患者さんの脳トレは、

残念ながら期待できないことになります。

【参考文献】Butler M et al. Does Cognitive Training Prevent Cognitive Decline?: A Systematic Review. Ann Intern Med. 2018 Jan 2;168(1):63-68.

*認知症や軽度認知障害などないかたには、脳トレは認知症発症の予防になると思われますので誤解ないようにお願いします。

認知症につながる重要な危険因子との分析を、英ロンドン大などの国際チームが英国の医学誌ランセットに発表されました。

その研究では、

若年から高齢者までの認知症の危険因子を評価されました。

このうち、

最も危険因子が高い項目は

45~65歳での難聴(9・1%)となりました。

その後に

18歳未満の低い教育水準(7・5%)

66歳以上の喫煙(5・5%)

45~65歳での高血圧(2%)

肥満(0・8%)

66歳以上でのうつ(4%)

運動不足(2・6%)

社会的孤立(2・3%)

糖尿病(1・2%)で、

計35%が認知症の危険因子であると考えられました。

つまり、これらの危険因子を完全にとりのぞくことができれば、認知症の35%を防ぐことができるということです。

専門的ですが、

各リスク因子への曝露率、同曝露に起因する発症の相対リスクを基に人口寄与割合(PAF)を算出しております。

共通性による補正を通じて各リスク因子のPAF全体への相対的寄与度をweighted PAFとして求め、これを各リスク因子が完全に排除された場合に予防可能な疾患の割合と定義しております。

難聴が重要因子になった理由について

「会話などの外部からの刺激が減ることにより、脳の活動の機会も奪われるためだろう」と推測されております。

【参考文献】Gill Livingston et al. Dementia prevention, intervention, and care. Lancet 2017; 390: 2673–734.

まとめ

脳トレは物忘れが出る前にやろう、聴覚など五感を使うことが認知症予防になることがわかりました。

有酸素運動を習慣化し高血圧、肥満、運動不足、糖尿病の改善をし、

聴力低下については、積極的な耳鼻科系の治療や補聴器の使用をし、

積極的な五感の活用をすることが

認知症リスクを約4割減らすということが期待されます。

脳トレについて

一生懸命に認知症患者さんに脳トレをおこなわせている、姿も最近目にすることが多くなりました。

ときには、嫌がっているのに無理やり。

物忘れの患者さんに物忘れがあることを責めることは決してしてはいけません。

あなただって、「よく忘れるね!」と注意されたらムカッときませんか?

人の価値は記憶力ではないはずです。

よく忘れるからといって、それを忘れるな、がんばれと励ますのってどうでしょうか?

小学生でもいまどき、「忘れるな!覚えとけ!」式の教育はしないのではないでしょうか?

脳トレはあくまで、楽しむものであることを忘れてはいけないと思います。

記憶障害が出現し脳トレを楽しむことができなくなり負担と感じるひとは多いのではないでしょうか?

今回のデータにより、エビデンスとして軽度認知障害以上の方には、脳トレの効果が期待できないことがわかりました。

必要以上に強制した脳トレは精神的にも有害であるばかりでなく、記憶の点からも無意味だったと解釈します。