驚くようなところに病気があった

名医は患者さんからの言葉をきき、そして診断をする。

わたしの過去の経験です。

傍腫瘍症候群(ぼうしゅようしょうこうぐん)という病気があります。

これは、病気の名前では本当はなく、ある病気によっておこる神経障害などの症状をきたした状態をさします。

広島大学病院で働いていたころ

もう20年以上も前の話です。

私は研修医あがりでした。

外来で○○先生によびだされました。

「井上先生、××さんのルンバールお願い。」

ルンバールというのは腰椎穿刺のことです。

腰椎穿刺は英語でルンバール・パンクチャーといいます。

それを頼まれたのです。

「はい、わかりました。」

その○○先生は、若かりし頃の私にとっては、問診もいいかげんで、診察も雑な印象をもってました。

当時一人の患者さんを診察するのに、私は一時間以上費やすことはざらでした。

一方、○○先生は症例報告の達人でした。

兎に角、だれにもわからないような疾患を推測し、診断していくのでした。

「ふらつきがある。小脳炎っか。」

そう思って、患者さんにベッドに横になってもらい検査をさせていただきました。

結果。細胞数と蛋白が増えてました。

この結果は、髄液のなかに炎症がおこっている。

まさに私の直感があたったところでした。

ところが、なにを思ったのか○○先生、では「井上先生、この患者さんの胸部CTを撮影して。」

昔は、下の医師が簡単に上の医師に質問をすることなんかできませんでした。

言われるまま、胸部CT検査をしたところ。

肺癌がみつかりました。

そして、その患者さんは呼吸器科に紹介されたのです。

つまり、肺癌の組織に対して、われわれの体が異物として認識し、抗体(こうたい)をつくります。

その抗体は肺癌組織のみを攻撃すればよいのですが、××さんの小脳の組織まで攻撃したのです。

それにより、小脳炎を生じていたのです。

そのため、その患者さんの主訴はふらつきで大学病院脳神経内科を受診されたのでした。

当時の、私の診断予想は小脳炎まででした。

まさか肺癌があり、小脳炎になっているとは。。。

いまでも、○○先生のことは尊敬しております。

(今思えば、多くの患者さんを短い時間で○○先生はみていたので、未熟なわたしからは診察も雑にみえたのでしょう。)

*脳神経内科がどのような科か、さらに知りたいかたは広島ドクターズのインタビュー記事もご参考に。

広島ドクターズ(青文字の上をクリニックしてください)