片頭痛の原因

様々な研究と理論によって、片頭痛の正体は少しづつわかってきました。

そして今に至っては、その全体像がはっきりと見えかかっていると言っても過言ではない状況になっているのです。

しかし、人体の神秘はその程度では解明しきったとは言えません。

・片頭痛の原因の説明はなぜ食い違うのか。

一番の原因は、片頭痛は複雑な現象がおこるため一つの原因を特定することがいままではできませんでした。

もちろんある程度の仕組みはわかってはいますが、その内容は複数存在する上それぞれに足りない部分があり、完全に証明されたとは言えないのが片頭痛の現状でした。

片頭痛の原因として有力であった3つの説

そんな片頭痛の原因として、説得力を持って存在していたのは以下の3つの説です。

『血管説』

『神経節』

『三叉神経血管説』

もちろんこのどれもが、それなりの説得力を持て受け入れられていましたが、同時にそのどれもが疑問を呈されている説でもあったのです。

というわけで、ここからはこの三つの説明について解説をしていきましょう。

 

片頭痛を起こすと言われた3つの説

 

・血管説

片頭痛を感じる人の中には、どくんどくんと脈打つような痛みを感じる人がいますね。

その心臓の鼓動に由来するような拍動をヒントに、血管に流れる血液の量によって片頭痛が起こるのではないかと考え出されたのが、この血管説です。

その仕組みは、まず何らかの原因で頭蓋の血管が収縮するところから始まります。

実は片頭痛には、その前段階に前兆といわれる光(閃輝暗点)が見えることがあるのですが、この血管収縮によって神経に血がいかなくなることでその前兆が起こると考えられたわけです。

その後、収縮していた血管が元に戻ろうとするときに血管のキャパシティーを超えた血液が一気に送られることで、心臓の鼓動に合わせた拍動性の痛みが起こるというわけです。

しかし、これは次の点によって否定されています。

それは何かといえば、まず元々のところで拍動性の痛み、つまりどくんどくんと脈打つような痛みを感じる患者さんが片頭痛患者の半数程度しかいないという点です。

これでは、片頭痛のすべての原因としてそれをカバーできませんよね。

そして、もう一つはいわゆる前兆と言われる現象が、血管の収縮前にすでに起こっていることがデータによって明らかにされたわけです。

しかし、この説は、セロトニンという物質に深い関係をみいだすことで新たな理論がうまれ治療薬の開発につながりました。

セロトニンというのは血小板(かさぶたを作る基になっている傷を修復する血液の成分)の中に多く含まれる物質で、血管の収縮に関わる成分なのです。

1960年代に片頭痛患者に対するセロトニンの状態を調べる研究がなされました。

結果、セロトニンは片頭痛を起こした後に血小板内から減少しているという研究結果がまとめられ、またそれをもとに静脈にセロトニンを注射することで頭痛が緩和することが分かったのです。

これにより頭痛の特効薬であるトリプタン製剤というものが開発されました。

 

・神経説

これは、少し難しいお話になりますが、脳の働きと前兆現象の関連のお話です。

ブラジルの生理学者であるLoao博士は、脳に皮質拡延性抑制(CSD)と呼ばれる現象が起こるということを1944年に発見し、報告しました。

しかし、その報告後長きにわたりそのCSDについては注目されてはいませんでした。

1990年代になり片頭痛の病態研究において、脳血流の減少が後頭葉から前方に向かって一分間に約2~3 mmのスピードで広がっていくと報告されたのです。

といっても、何のことかさっぱりだと思いますが、実はこれCSDが起こる様子とほぼ一致する結果だったのです。

これによりCSDはにわかに注目され始めます。

実はこの徐々に広がっていく脳血流の減少とCSDの様子は、前兆である光(閃輝暗点)の様子とも相関性があったのです。

この発見は、片頭痛の原因としてCSDの関与を疑うに十分なものでした。

ちなみにこの前兆現象の広がる様子を、文章で見事に表現した人がいます、その人はその作中でこう表現しているのです。

 

「のみならず僕の視野のうちに妙なものを見つけ出した。妙なものを?―と云ふのは絶えずまはつてゐる半透明の歯車だった。僕はかう云ふ経験を前にも何度か持ち合せてゐた。歯車は次第に数を殖やし、半ば僕の視野を塞いでしまふ、が、それも長いことではない。暫らくの後には消え失せる代わりに今度は頭痛を感じはじめる。―それはいつも同じことだった。」

実はこの作者、あの文豪の芥川龍之介です。

彼が「歯車」(現代日本文学大系 43 芥川龍之介集)という題で表したこの前兆現象の様子は、まさにその広がりを的確に表現していると言えます。

しかし、これだけでは、頭痛の前兆のみの話で、痛みを感じるという説明は困難になってきます。

そう、つまりこれだけでは痛覚を持たない脳にどうして痛みがあるのかが説明できないのです。

 

・三叉神経血管説

最後に頭痛の原因としてもっとも最近取り上げられているのがこの説。

これはMoskowitzらが提唱した説で、脳血管が拡張するときに炎症を起こす物質が血管から漏れ出すことによって痛みが発生するというシンプルな説です。

シンプルな説ですが、これだけでは何が血管を拡張させるのかは不明なままです。

また、最近の研究では、片頭痛が始まる時は血管が拡張しているどころか少し収縮しているともいわれているのです。

この結果は、当然のことながら、三叉神経血管説の血管が拡張するから片頭痛が起こるという考え方を真っ向否定するものです。

 

上記の三つの説明をまとめて、最近のCGRPという炎症誘発物質の概念を考慮した片頭痛の原因の説明を前回のブログで行ってみました。