片頭痛は日常生活に支障をきたす頭痛であり、月平均の頭痛日数が、6日以上であったり二回以上ある場合は予防薬投与を考えたりします。あるいは頭痛の程度が酷い場合や閃輝暗点(せんきあんてん)などが出現して就業に影響がでる場合など(タクシーの運転手さんなど)では、上記の頻度よりも少なくても予防薬を投与します。お薬の効果には個人差がありますが、現在ある予防薬でも個人差があり、最低二ヶ月は飲んでいただかないと効果がわからないことがあります。そして平均6割程度の改善率があると言われております。つまり月に10日頭痛があった人は6日位に減るといった具合です。

そのような中で、もっと頭痛に効果があるお薬がないかと数年前から治験を繰り返しているお薬があります。それはフレマネズマブ、エレヌマブという二種類の注射薬です。

2017/12/07にはフレマネズマブ、12/08にはエレヌマブが片頭痛の頭痛発症に予防効果があったとNew England Journal of Medicineという世界で最も格式の高い論文のひとつに掲載されました。

もくじ

「片頭痛の原因を教えてください」

よく質問されますが、これは数年前までは原因不明といわれてきておりました。近年の研究によりはっきりしたのです。むつかしい名前ですが、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)という蛋白質が発生するのが頭痛の原因だったのです。つまり、片頭痛患者さんでは、三叉神経の末端が刺激されて、そこからCGRPが分泌されて血管拡張を誘発し、急性片頭痛がおこるとされています。

「原因に基づいた治療法」

病気の治療は病気の原因がわかった時に、格段と進歩するといわれております。ついにCGRPが見つかったのでこの蛋白がくっつく部分(受容体じゅようたい)に対して、それを阻害する抗体(こうたい)を作ったのです。

「フレマネズマブ」は三か月に一回、または毎月皮下注射しました。

毎月注射した群で、なんと約4割もの患者さんで、頭痛の日数が半減したのです。

「エレヌマブ」は毎月皮下注射しました。

なんと約4割から5割の患者さんで、頭痛の日数が半減しました。

どちらも有効、しかも従来の内服のように毎日服用する必要がありません。これはすごいことです。ただし、私はこの夢の治療薬に一点、心配があります。

薬価がどうなるのか。高額にならないか?

○○マブというお薬はヒトモノクローナル抗体といって、遺伝子工学の技術で作るものなのです。骨髄腫や悪性黒色腫などの癌をはじめとした疾患に対して治療されてきました。

因みに、現在の使われているモノクローナル抗体の薬価です

(骨髄腫)ダラツムマブ ダラザレックス®点滴静注100mg5mL1瓶 51,312円 ダラザレックス®点滴静注400mg20mL1瓶 184,552円

(悪性黒色腫)ニボルマブ オプジーボ点滴静注®20mg 2mL1瓶150,200円 オプジーボ点滴静注®100mg 10mL1瓶 729,849円

【参考文献】 Silberstein SD, et al. N Engl J Med. 2017;377:2113-2122.

Goadsby PJ, et al. N Engl J Med. 2017;377:2123-2132.