私こと、広島で頭痛・脳神経の内科クリニックを開業しております。
いきなり猫背のキリンの登場でしょうか?
もくじ
頭痛で悩む方で、「首が真っ直ぐでストレートネックですね。」と、言われた経験がある方は多いと思います。
私も診察の時に頭痛を主訴に来院されて、肩こりが強い方などは頸椎のレントゲンを撮影します。
ストレートネックはかなり多くの率で見つかります。
これは長年、猫背(ねこぜ)、つまり首突出し姿勢をしたことによることがほとんどです。
頭部は4kgから5kgの重さですが、それを首で支えているわけなので、猫背姿勢をすると前弯していた頸椎の形状が異なってきます。
普通は前弯することによって、頚部の筋肉全体を使ってほどよい緊張で頭部を支えることができてます。
猫背姿勢は頚部を突き出したような姿勢になり、頚部の筋肉が部分的に力が加わるという結果になります。
この状態を長年続けることで頸椎の構造に変化がでて、ストレートネックになります。
猫背姿勢は頚部の筋肉の使いすぎになりますので、肩こりの原因になる場合があります。
そして猫背姿勢をとるようになったことがストレートネックの原因です。
猫背姿勢をすること、ストレートネックのかたはみんな肩こりがありますか?
そしてその姿勢やストレートネックが肩こりの原因ですか?
実は違うのです!
人の脳が肩凝りの原因なのです。
脳の指令が筋興奮のすべてだからです。
基底核という脳のど真ん中に広がる扇型構造物には多種の神経伝達物質が流れており姿勢や運動を調整するように働いております。
例えば肘を曲げようとした時には、上腕二頭筋が縮んで(収縮して)、上腕三頭筋が伸びる(弛緩する)ように基底核が調整します。
基底核に失調が起こるとこれらの連携が取れなくなり、肘を曲げようとしても勝手に上腕三頭筋が収縮して肘を伸ばそうという方向になります。
目を開けたり閉じたりする動作も、開眼時には上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)という目を開ける筋肉が収縮して目を開きます。
閉眼時には眼輪筋(がんりんきん)という目を閉じる筋肉が収縮して目を閉じます。
上眼瞼挙筋と眼輪筋はお互いが作用筋と拮抗筋になってバランスを保っています。
基底核に失調が起こるとこれらの連携が取れなくなり、眼瞼痙攣(がんけんけいれん)という病気になり、目を開こうと思っても閉じるための眼輪筋が収縮してしまうという結果になります。
同様に、
肩凝りも、適切な筋緊張で頭部を支えることができなくなることによって生じます。
この頚部周囲の筋肉の異常興奮が酷くなると、頚部の位置が曲がってしまい、酷くなると痙性斜頚(けいせいしゃけい)という病気になったりします。
これらの状態はジストニア(筋緊張の失調)といいますが、肩こりをジストニアと考え、病気と考えるかは論議されるところです。
ストレートネックでも猫背姿勢を止めたり、普段から頚部周囲の筋緊張をなくすようにつとめていた場合は肩凝りは出現しません。
不思議なことですが、猫背姿勢でも肩凝りが全然ない方がいます。
通常は猫背姿勢など異常姿勢だと筋肉に不必要な力がかかりますが、例外的に猫背姿勢でも筋肉に不必要な力がかからない人もいます。
そのような方は、猫背姿勢になっても脳がうまく頚部の筋肉の緊張を調整して不必要な過緊張が生じないのです。
このご高齢男性、背中が曲がってます。でも肩こりはあるかどうか不明です。
このような方にいきなり姿勢が悪いと矯正しようとするときっと肩は凝るは背中の痛みや腰痛が生じるのは明らかでしょう。
脳が今の姿勢に慣れてきているからです。この方にとってはこの姿勢がベストなのかもしれません。
一般に、異常姿勢だと筋肉に不必要な力がかかりますが、姿勢が良くても筋肉に不必要な力が加わることがあります。
ストレス・睡眠不足・緊張・過度の仕事・同じ姿勢を続ける・煙草・くすりなどが原因です。えっ?煙草やくすりが原因?不思議だと思いますが本当です。
姿勢の良しあしに関係なく基底核の状態次第では筋肉に不必要な力がかかるということです。
神経伝達物質でドーパミンというのがありますが、ドーパミンは多くでたり少なく出たり変動が強いと基底核のドーパミン受容体の活動に変動がおこります。
この変動により筋肉の異常興奮がおこるとされております。喫煙中はドーパミンが多くでて煙草を吸わない時はドーパミンがでなくなるという変動が筋肉の異常興奮の原因になるのです。
またドーパミンの受容体を阻害する作用のある胃薬や抗精神病薬なども筋肉の異常興奮の原因になります。
ですから、喫煙やある種の内服は肩凝りの原因、ジストニアの原因になると言われております。
姿勢の悪さ=肩こりではないということです。姿勢の悪さ=ストレートネックですが、ストレートネック=肩こりではないのです!
*姿勢の悪さやストレートネックが直接の肩凝りの原因ではないと説明しておりますが、姿勢の悪さやストレートネックは治るにこしたことがない肩凝りの要因になりうるものです。
ストレートネックや一部の方の姿勢の悪さは治らない場合も多くありますが、それでも肩凝りは治るというように理解していただけると幸いです。
肩凝りの直接の原因でないから姿勢の悪さ(これは要因になることが多い)は放置してもよいと言っているのではありません。