広島で頭痛患者さんを多くみてますクリニックの院長のブログです。
本日はCADASIL(カダシル)という一般の人が聞いたことがない病気についてつぶやきます。
そして誰でもが知っている片頭痛という病気についても語ります。
また、新たな治療法が解明される日を心待ちにして。。。
もくじ
たかが血管されど血管
人の体は血管で作られいるといってもいいすぎでないように、いたるところに血管がわれわれの体に張り巡らせているのです。
血管の重要性は、医師をしていると痛切に感じております。
血管を守ることはすなわち脳や心臓などの臓器をまもることです。
片頭痛は血管性頭痛といわれます。
血管性頭痛は、拍動性頭痛です。
ズキンズキンと脈をうつような頭痛、心臓が頭にあるようだと表現される方がいます。
ただ、この拍動性頭痛を感じられる方は片頭痛の患者さんの半分くらいです。
ほかの方は、重たいような痛みや、締められるような痛みです。
片頭痛は遺伝疾患で、複数の遺伝因子が関連しているといわれます。
先日、10代で片頭痛を発症して40代位から認知症の症状をきたす病気を紹介しました。
(10代ではこの病気の存在がわからないから、片頭痛を発症となります。
片頭痛は二次性頭痛を除外しなければなりませんので、この病気の頭痛は
片頭痛ではなく、片頭痛様頭痛です。)
CADASIL(カダシル)です。
CADASILの患者さんは成人10万人あたりに2-4人と推定されていますが、実際はそんなに多くの患者さんはいません。
診断されていない患者さんが多くいるのだと思います。
この疾患は正常な血管を形成するのに必要なNotch3(ノッチスリー)という遺伝子の異常です。
つまり血管の異常です。
CADASIL の患者さんの頭痛はどのような痛みでしょうか?
残念ながら、拍動性頭痛の割合は見つけることができませんでした。
ただ、頭痛の前兆について調べることができました。
CADASILの患者さんの75.3%に片頭痛の既往がありました。
そのうちの89.8%の方に前兆があったようです。
前兆のある片頭痛は脳血管障害のリスク要因になるのです。
でも、なぜか?というのは今の医学は解明してません。
また、不思議なことに、CADASIL では、片頭痛を持ってない方の方がより予後が悪いといわれてます。
よく、片頭痛は年をとると治るといいます。
血管が固くなるからです。
動脈硬化がすすんで頭痛がなくなるというのは素直に喜んでよいのですか?
と聞かれることがあります。
複雑な心境です。。。
CADASILのような病気も血管が土管(どかん)様に固くなることが知られております。
そのために脳組織に十分な酸素や栄養素を送ることができなくなります。
その結果、認知症になります。
CADASILの患者さんは認知症(40代以降)がでてくるころには頭痛がなおっていることが多いようです。
では、片頭痛がなかったCADASILの患者さんは血管が最初から固かったのでしょうか?
だから、予後がより悪いのでしょうか?
謎が続きます。
最後にひとこと
840万人もいる片頭痛の患者さんと10万人に2-4人しか見れれないCADASILの患者さんを比較しておりますが、片頭痛の患者さんがみんな脳梗塞になるというわけでは決してございません。
ある程度のリスク(要因)をもっているということです。
将来的に、認知症や脳梗塞のリスクを減らすためにも頭痛コントロールは大切になるのではと思います。
CADASILという疾患について考えていくと、片頭痛の謎解きができるような気がする気がする科学者は多いのではないでしょうか?
ぜひ、片頭痛研究が、CADASILという難病の研究が発展し、あらたな治療法や予防法が見つかることを心より祈っております。
【参考文献】
Adib-Samii P, Brice G, Martin RJ, Markus HS. Clinical spectrum of CADASIL and the effect of cardiovascular risk factors on phenotype: study in 200 consecutively recruited individuals. Stroke. 2010;41: 630–634.
私は、 CADASILの患者です。60歳です。私の場合もやはり、45歳~50歳の間だったと思います、片頭痛がとにかく酷くて、毎日、4時間置きに、頭痛薬を服用していました。それを、1ヶ月以上も続けていました。その時は、自分がCADASILだと言うことはまだ知らない時です、CADASILと言う診断を受けて、脳神経科の先生に片頭痛の事を相談したら、その時先生に勧めて頂いたのが、ビタミンB2 100g/Riboflavinでした、頭痛薬と違って即効性はないけど、飲み続けたら少しずつ効いて来るから、と言われて飲み始めました、それ以来、1日も欠かさずB2を飲んでます。今では殆ど、片頭痛はなくなりましたが、井上先生の記事によると、年齢を増すと血管が硬くなって、片頭痛もなくなるとあります、私が飲んでいるB2のせいでは無いのでしょうか?
今、私は、症状が出ない様に、とにかく脳梗塞にならないように、塩分を少な目にコレステロールに気をつけて(Pre糖尿病と言う診断を受けてます)毎日運動を欠かさず、頑張っています(今は、コロナで、外に出れないし、ジムも閉まってるので運動ができない状態ですが)、、、私の子供はまだ検査してませんが、万が一遺伝していたとしても、、私も先生と同じ様に、この先、10年、20年先、治療方法、予防方法が見つかる事を心から願っています、次の世代の為にも、、、。
素晴らしいコメントをありがとうございました。
すぐにお返事をしようと思いましたがPCでの返信がうまくできない、適切な内容を書きたい、忙しさにかまけてなど。
大変遅くなりました。
文章を拝読するかぎりではまだ認知症など発症していない画像変化をともなう遺伝子キャリアーの患者さんと思います。
私どもでできるコメントは二点、ビタミンB2の有用性についてと、運動・食事・睡眠などの生活習慣改善の有用性かと。
ビタミンB2の有用性について
Machiko様に有効であったとのこと。
ほかにも有効であった方がいるのであればCADASILに有効なおくすりとして臨牀研究の対象になるかもしれませんね。
片頭痛にビタミンB2
これは頭痛学会でも推奨されております。
ビタミンB2は水溶性ビタミンであり、安全性にたけているという理由からです。
残念ながら片頭痛発作抑制のエビデンスはあまりとれておりません。
これは他のサプリと同様に効果の有用性があったとしても薬剤のお値段も安く有用性の有無をみる研究をすることができないといわれてることも一因です。
高血圧のおくすり一つを世の中に出そうと思えば、治験をしますが数百億円の費用がかかるとのこと。
サプリの有用性を見つけても、サプリに高い値段をつけないかぎり製薬会社さんは赤字になりますよね。
患者さんにとっても製薬会社さんにとってもメリットがあまりないはなしになります。
そのため残念ながらサプリの有用性の臨床研究は後回しになる傾向があるとのことです。
ただ、頭痛に対してのみでなくCADASILの発症予防に有効とのことであれば少し話が異なるかもしれません。
運動・食事・睡眠などの生活習慣改善の有用性
同じ神経変性疾患のアルツハイマー病では運動による予防効果のエビデンスが確立されました。
運動は酸素を弱った神経細胞に与えるばかりでなく抗酸化作用もあったり血液循環による毒性物質の除去になるといわれてます。
CADASIL発症予防にも十分貢献できるのかと。
同様に食事や睡眠なども関係しますよね。
カルフォルニア大学の神経学の先生がYouTubeで言ってました。
アルツハイマー病発症の20年前から運動・食事・睡眠などの生活習慣の改善をしていたら9割の発症抑制ができると。
CADASILはNOTCH3の細胞外ドメインの沈着とまで解明されてます。
アルツハイマー病がベータ蛋白やタウ蛋白の沈着といわれてます。
同じような変性した蛋白の沈着の疾患だからCADASILの予防として生活習慣の改善は期待できますね。
ちなみに我々日本人の多くがアルツハイマー病になりやすい遺伝子APOE4をもっています。
病気遺伝子をもっているからとネガティブにならず、Machiko様のようにポジティブな姿勢が大切ですね。
とはいえアルツハイマー病と同様にCADSILも画期的な予防方法・治療方法がみつかることを心より願います。
ご無沙汰しています。
2年前にコメントを残させて頂きました、Machikoです。あれから、2年が経ちました。
まだ認知症も出ず、2年前と変わらない生活をしています。取り敢えず、元気です。
最近、脳神経内科にCheck upに行って、MRIを撮って検査してもらいました。
Dr曰く、やはり、最近も、ミニ脳梗塞の形跡があったらしいです。できるだけ、血圧は毎日計るようにしていますが、時々、血圧がすごく高かったりした時は本当に怖いです。いまも毎日ビタミンB2をのんでます。偏頭痛もありません。
でも、何となく、物忘れが酷く、とうとう認知症、出てきたかな、、、何て思って、友達に話したりしても、「年取ると、皆んなそうだよ、私もそうだよ〜」なんて言われてしまいます。
最近では、三重大学の脳神経内科で、アドレナメデュリンの治療が始まったり、治療可能な病であると実証されれば本当に大きな一歩だと思います。
でも、これからも、引き続き、気をつけて行こうと思います。
日本は、今、とても暑そうですが、熱中症などには気をつけてください。