もくじ

「筋束攣縮とALS(筋萎縮性側索硬化症)」そしてインターネット検索の落とし穴

最近、私のクリニックを受診された患者さんの中に、「全身にピクツキ(筋束攣縮)がある、自分はALSではないか」と強い不安を抱えておられる方がいらっしゃいました。

ある患者さんは、いくつかの医療機関を受診され「ALSかもしれない」と告げられ、不安のあまりさらに病院を受診されました。最終的には専門病院で針筋電図を行いALSは否定されたのですが、それでも「自分はALSに違いない」と信じ込み、安楽死を希望するほどまで追い込まれてしまったのです。

背景には、インターネットやChatGPTなどAIからの情報ありました。
ChatGPTは便利な情報源ですが、医学的に「ALSの可能性を完全には否定できない」というニュアンスを残すことが多く、それが患者さんに「やっぱりALSかもしれない」という強い思い込みを与えてしまうことがあるのです。


筋束攣縮とALSの関係

  • ALSでは筋束攣縮が見られることがあります。
  • しかし 筋束攣縮=ALSではありません。
  • むしろ、筋力低下や筋萎縮が進行して初めてALSを疑います。
  • 全身にピクツキがあっても筋力低下が全くない場合、良性筋束攣縮症候群や、睡眠不足・ストレス・カフェイン・電解質異常などが原因のことが大半です。
  • 医学的に「筋束攣縮だけで進行し、筋力低下を伴わないALS」は報告されていません。

インターネット検索・AI情報の注意点

  • ChatGPTを含むAIは、患者さんに寄り添い「ALSを完全否定しない」表現をします。
  • これは「万一を見逃さない」ための配慮ですが、結果として患者さんには「やはりALSかもしれない」と強く感じさせてしまいます。
  • 医療現場では、診察・検査の結果をもとに専門医が判断した内容最も信頼できる情報です。

不安を抱えた患者さんへのメッセージ

  • ALSは非常に稀な病気です。
  • 筋束攣縮だけでALSと診断されることはありません。
  • 不安なときは 神経内科での診察や必要な検査(筋電図など)を受けることが最も確実な方法です。
  • AIやインターネットの情報は参考程度にとどめ、最終的には主治医の説明を信頼してください。

医療者としての立場から

私自身も、ALSを強く信じ込んでしまい日常生活が苦しくなっている患者さんを複数経験しました。
不安が強くなる背景には、AIや検索情報の「完全否定しない答え方」が影響していると実感しています。

だからこそ、今後は私たち医療者が、

  • 正確で安心につながる情報を発信すること
  • 患者さんの不安を和らげる説明を丁寧に行うこと
    が、ますます重要になると考えています。

✅ まとめ
筋束攣縮=ALSではありません。
筋力低下を伴わない全身のピクツキでALSと診断されることはありません。
不安があるときは、インターネットやAI情報だけで判断せず、必ず専門医に相談してください。