本日はシナモンの話題からはじまります。

もくじ

シナモンは「スパイスの王様」と呼ばれることもあり知らない人はいないのでは?

でも熱帯地方で栽培されていることや多くの漢方の生薬で使用されていることをご存じなかたは少ないのでは?

シナモン(英: Cinnammon)は、ニッケイ属(Cinnamomum)の複数の樹木の内樹皮からつくられる香辛料なのです。

「スパイスの王様」とも呼ばれるシナモンですが、「世界最古のスパイス」とも呼ばれます。

シナモンは紀元前4000年ごろからエジプトでミイラの防腐剤として使われたのが始まりなのです。

紀元前6世紀頃に書かれた旧約聖書の「エゼキエル書」や古代ギリシアの詩人サッポーの書いた詩にもシナモンが使われていたことを示す記述があります。

中国では後漢時代(25年-220年)に薬学書である「神農本草経(しんのうほうぞうきょう)」に初めてシナモンのことが記載されております。

我が国にも8世紀の前半に伝来されております。

正倉院宝物のなかにもシナモンが残されております。

この時は桂心という名前で薬物(生薬)として奉納されたもののようです。

樹木として日本に入ってきたのは江戸時代の享保年間のことのようです。

クスノキ科トンキンニッケイやその他同属植物の樹皮を乾燥したものを用いております。

生育地は以下のようになります

トンキンニッケイ

中国の南部(浙江、福建、広東、広西省)やベトナム北部です。

ジャワニッケイ

インドネシアに自生しており、中国南部からマレーシア地方に分布しています。

セイロンニッケイ

スリランカやセーシェル諸島を中心に熱帯地域で栽培されています。

でそのシナモンが漢方の生薬に使われています。

セーシェル諸島、青い海とビーチ

桂皮(けいひ)と桂枝(けいし)です。

桂皮は樹皮です、桂枝は若枝を乾燥したものになります。

効用です

芳香性健胃

発汗

解熱

鎮痛

整腸

駆風(くふう)胃腸のなかにたまったガスを排出されせることです。

収斂(しゅうれん)

症状としては

腹部では~

食欲不振

神経性胃炎

慢性胃炎

胃下垂

胃酸過多症

動悸

慢性胃拡張病

つわり

下腹部では~

尿量減少

生理痛

 

桂皮と桂枝が使われている代表的な漢方を背番号をつけていつものように列記してみます。

1 葛根湯(かっこんとう)

風邪のひきはじめに用いたりします。

後頚部(うなじ)や背中にかけての筋肉痛にも有効です。

眼精疲労にも!

5 安中散(あんちゅうさん)

胃薬のような作用をします。冷え症、神経質で、胃の痛みや胸やけがあるかた。

10 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)

風邪が少しピークを越えたとき位に使われることがあります。

頭痛や関節痛に効果あります。胃の痛みや胸痛、悪心、腹痛が激しく食欲が低下している状態でも使用します。

11 柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)

衰弱して顔色などが悪く、微熱があり頭から汗がでている状態。

疲労感や食欲低下もあり、神経衰弱気味で、不眠、軟便の傾向あり。

尿量は少なく、口渇感あり空咳などされているかたにも有効です。

17 五苓散(ごれいさん)

咽頭が乾いて、水を飲んでも尿量が少ない状態です。

頭痛、頭重感あり吐き気やおう吐があるかた。(このあたりは片頭痛の症状ですね)

足などにむくみがあるかたにも有効です。

18 桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)

冷え症で、痛み、四肢に麻痺感があるかたです。

あるいは屈伸が難しいかたに有効です。

19 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)

水様性の鼻水といえば小青竜湯です。

アレルギー性鼻炎や風邪の初期などに多い症状に対して用いられます。

25 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)

比較的体力あるかた、ときに下腹部痛、肩こり、頭重感やめまい、のぼせなどを伴う症状で使用します。

足は冷えているかたに使用することが多く、冷えにも有効です。

26 桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)

虚弱なひとに使用することが多いです。円形脱毛症といえばこの漢方かもしれません。

27 麻黄湯(まおうとう)

インフルエンザのタミフルと同等といわれるこの漢方。

名前からして強力そうですね。

36 木防已湯(もくぼういとう)

左心不全には木防已湯といわれております。

一般に、咳嗽、口渇、尿量減少、顔面不良をともなうかたに処方します。

38 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)

お経のように長い名前の漢方。

腰が痛い冷え症の御高齢者にはよくきくとされてます。

比較的女性に多く使用します。もちろん若い女性のかたにも効果あり。

特に月経困難症を改善します。

39 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)

めまいといえば。

でもぐるぐる回る回転性のめまいにはいまひとつです。

45 桂枝湯(けいしとう)

感冒などの熱性疾患の急性期症状や慢性期疾患に広く使用されます。

一般に葛根湯が汗がでないとき(より初期)に使用して、汗が出始めると桂枝湯をつかいます。

腹部には軽度の腹直筋の緊張がみられるかたに効果あります。

60 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)

体力が低下した人の腹痛や排便異常にはよく使用されます。

潰瘍性大腸炎やクローン病にはよく使われます。

61 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)

体力があるかたの、のぼせと便秘に使用します。

左鼡径部に圧痛点があるのが特徴です。便秘だからあるのでしょうか?

63 五積散(ごしゃくさん)

体力は中等度のかたに、寒冷や多湿によって生じる下腹部痛です。

梅雨の時期や、冬の寒いときに下腹部の痛みを訴えられるかたに使用します。

体質では、下半身は冷えるのに上半身はのぼせる、頭痛、うなじのこり、悪寒や嘔吐、月経不順や月経困難をともなうかたに有効です。

64 炙甘草湯(しゃかんぞうとう)

比較的体力が低下したかたの、動悸や息切れを目標に使用します。

99 小建中湯(しょうけんちゅうとう)

体力が低下したかた、体質は虚弱です。

易疲労感や腹痛などをよく訴えるかたに有効です。

子供の片頭痛では易疲労感や腹痛をよく訴えられますが、子供の片頭痛に有効です。

106 温経湯(うんけいとう)

比較的体力が低下したかたの、四肢の冷感、月経異常、下腹部の膨満感、手掌・足蹠(そくせき)のほてり、手掌・口唇の角化・乾燥などを目標にもちいます。

108 人参養栄湯(にんじんようえいとう)

やせて血色が悪く、微熱、悪寒、咳嗽がとれずに倦怠感が著しく、食欲不振で精神不安、不眠、盗汗などがあり、便秘気味のもの。

病後や産後の体力増強、虚弱体質のかたに用いると有効です。

120 黄連湯(おうれんとう)

体力中等度もしくはそれ以上のかたの、心窩部の疼痛・膨満感・重圧感を目標に用います。

口臭を治したいとき、舌に白苔や黄苔がみられるときに有効です。

シナモンで関節リウマチ症状が緩和?

西洋医学もがんばってます。

シナモンで関節リウマチの症状が緩和したとJournal of the American College of Nutrition誌に先日掲載された論文です。

人口全体の0.4-0.5%が罹患しているといわれる慢性関節リウマチです。

シナモンを摂取するとリウマチ(RA)患者さんの炎症や臨牀症状が改善するという研究です。

ケアネット

女性RA患者36例を対象とした無作為化二重盲検試験。

対象者を無作為に2群に分け、シナモン粉末500mgまたはプラセボが入ったカプセルを8週間連日投与します。

開始時および終了時の空腹時血糖(FBS)、脂質プロファイル、肝酵素、C反応性タンパク質(CRP)、TNF-α、赤血球沈降速度(ESR)、血圧、臨床症状を測定しています。

結果

・プラセボ群と比較して、シナモン群のCRPおよびTNF-αの血清中濃度が有意に減少した(p<0.001)。

・拡張期血圧はプラセボ群と比較して、シナモン群で有意に低かった(p=0.017)。

・プラセボ群と比較して、シナモン群は、臨床スコアであるDAS28(Disease Activity Score)、VAS(Visual Analogue Scale)、圧痛関節数および腫脹関節数を有意に減少させた(p<0.001)。

・FBS、脂質プロファイル、肝酵素、またはESRの有意な変化は観察されなかった。

【参考文献】

Shishehbor F, et al. J Am Coll Nutr. 2018 May 3:1-6. [Epub ahead of print]

桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)などは慢性関節リウマチでよく使われる漢方ですね。

まとめ

シナモンについて興味深いことをお話ししました。

シナモンである桂枝(けいし)桂皮(けいひ)のはいった漢方を紹介しました。

シナモンが慢性関節リウマチによいという論文を紹介しました。