このたび台風、地震に被災された皆さまにお悔やみとお見舞い申し上げます。
いのうえ内科脳神経クリニックの井上です。
本日は高山性頭痛についてのお話です。
先日、片頭痛もちの患者さんで富士山に登ったときに頭痛発作がでたとのこと。
「トリプタン製剤(片頭痛の特効薬)を飲んでみたけど効果なく大変だった。」
これは高山性頭痛による発作と思われました。
「通常のアセトアミノフェンやイブプロフェンでよかったのに。」
高い山に登られる片頭痛の患者さんには注意しておくことかと思いました。
頭痛の特効薬をもっているがために、頭痛であれば片頭痛でなくてもトリプタン製剤を使用してしまう。
これは、インフルエンザの頭痛でトリプタン製剤を飲まれて効果なく、アセトアミノフェンなどの解熱剤が効果あるのこと似ていますね。
*アセトアミノフェン・イブプロフェンは薬局やコンビニで手に入れることができます。
トリプタン製剤は医師の処方せんが必要。
もくじ
国際頭痛分類では高山性頭痛。
通常は両側の頭の痛みがおこり、海抜2500メートル以上の山に登ったときに出現。
下山すると24時間以内に自然に消失します。
高いところは気圧が低くなり低酸素の状態になっております。
そのような低酸素の状態におかれたときに発生するのが高山病であり高山性頭痛です。
主な症状は、頭痛、はきけ、嘔吐・眠気(めまい)です。
したがって片頭痛発作のときの症状に類似。
顔面や手足のむくみ、眠気やあくびなどの症状、運動失調、低圧と消化器官の機能低下による放屁などもあらわれることあり。
低酸素の状態においては数時間で発症、通常は一日以内に自然消失します。
重症のときには高地脳浮腫や高地肺水腫をおこして死に至ることもあるのです。
頻度
高地登山ではなんと三割以上の登山者が高山性頭痛になるんです。
危険因子は
1 片頭痛
2 動脈血中の酸素飽和度の低下(つまり呼吸器系・心血管系の状況や既往)
3 運動負荷にたいする感受性が強いかた
4 24時間に2リットルを下回る水分の摂取量
これらが危険因子とされます。
予防策
アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの単一成分の鎮痛薬で多くの場合、頭痛は軽快するんです。
医師の処方がある場合では、アセトゾラミドやステロイドなどのお薬も使用することができます。
他には
高地で激しい運動をする場合には、その前に二日間の馴化期間をおく、アルコールの摂取を避けたり、十分に水分を補給することなどがあげられます。
国際頭痛分類第三版β版(ICDH-3β)による高山性頭痛の診断基準
いつもながら、すこし堅苦しい基準ですね。
A 頭痛はCを満たす
B 海抜2500メートルを超えた地点への登山
C 原因となる証拠として、以下のうち少なくとも二項目が示されている
1 頭痛は登山するのと時期的に一致して発現している
2 以下のうち一方もしくは両方
a) 頭痛は登山を続けているのと並行して有意に悪化している
b) 頭痛は海抜2500メートル未満の地点への下山後24時間以内に消失している
3 頭痛は以下の三項目のうち少なくとも二つを有する
a) 両側性
b) 軽度か中等度の痛み
c) 運動負荷、体動、いきみ、咳あるいは前屈により増悪する
D ほかに最適なICDH-3の診断がない
まとめ
トリプタンを使用して治らなかった高山性頭痛の紹介。
高山病・高山性頭痛について概要を説明。
予防策について医学的エビデンスのあるものについて紹介。
国際頭痛分類における高山性頭痛の診断基準を掲載。
その他